【相続放棄シリーズ】6 相続放棄の理由はさまざま

暖かい日が増え,東京駅前では桜も咲き始めました。

 

もっとも,新型コロナウィルスの影響もあり,昨年に比べて桜を鑑賞しに来る人も減っているように感じます。

 

相続放棄シリーズ第6回目です。

 

今回は,相続放棄をする理由についてです。

 

1 相続放棄申述書記載事項

相続放棄の手続きを行う場合,裁判所に対して相続放棄申述書という書面を提出します。

 

通常,書面には,「申述の趣旨」と「申述の理由」を記載します。

 

「申述の趣旨」とは,申述人が裁判所に求める事項を端的に表したもので,「被相続人の相続を放棄する」というような書き方をします。

 

「申述の理由」とは,文字通りですが,相続放棄をしたい理由を書きます。

 

相続放棄を考えるに至った理由というと,一番初めにイメージされるのは,被相続人が有していたプラスの財産よりも,借金などマイナスの負債の方が大きい場合です。

 

たしかに,経験上もこのケースが一番多いです。

 

しかし,これ以外の理由でも全く問題ありません。

 

極端なことを言えば,被相続人に十分な財産があったとしても,他の相続人と関わりたくない,遺産分割協議が面倒なので無関係になりたい,という動機で相続放棄をしても構わないのです。

 

実際に,以下のようなケースもありました。

 

依頼者様のお父様がお亡くなりになったのですが,お父様の配偶者(依頼者様のお母様)は,昔から自己中心的で全く話が通じない性格であり,突然激昂して過激な行動を起こすこともあったため,遺産分割の話をしようもなく,仮にしたとしても何が起こるかわからない状況でした。

 

依頼者様は既にお母様とは離れた場所で暮らしていたため,「他の相続人と関わりたくないため」という理由にて,小職が代理人弁護士となって相続放棄手続きを行ったうえで,相続放棄申述受理通知書をお母様宛に送付しました。

 

2 被相続人死亡後3か月以上経過している場合には詳細な説明をする

相続放棄の申述の期限は,相続の開始があったことを知った日から3か月です。

 

理論上は,相続の開始があったことを知った日から3か月以内に相続放棄申述を行えば,相続放棄は認められます。

 

もっとも,被相続人死亡日から3か月以上経過してから相続放棄を行う場合には,被相続人死亡日よりも後になって相続の開始を知ったことを,裁判所に対して示さなければなりません。

 

言い換えますと,被相続人死亡から3か月以内であれば,理由は簡素なもので良く,極端に言えば,相続に関わりたくないという,消極的なものでも構わないことになります。

 

他方,被相続人死亡から3か月以上経過しているのであれば,裁判所を納得させられるだけの理由が必要です。

 

被相続人が孤独死しており,ご遺体の損壊が激しかったため,DNA鑑定等によって身元が判明したのが死亡日から6か月後であったというケース,10年以上も前に音信不通になった親が1年以上前に死亡しており,親の債権者から金銭の支払いを求められて初めて親の死亡を知ったケースなどは,相続放棄申述書に詳しい事情を記載したうえ,可能な限り根拠となる資料を添付します。

 

特に,被相続人が死亡したことは知っていたが,3か月以上経過した後になって,多額の債務の存在が判明した場合などは,相続放棄をする理由を「債務超過のため」であるとし,債務の内容や債務の存在を知った経緯を詳細に記述する必要があります。

 

3 相続放棄の理由は多様化する可能性

先述の通り,現時点においては,相続放棄の理由の大半は債務超過(またはそのおそれ)です。

 

しかし,これは私見ですが,ライフスタイルの変化とともに,相続放棄の理由も変わってくると考えております。

 

相続が発生すると,法律上・事実上,非常にたくさんの手続きや作業が発生しますし,遺産分割に争いが生じると数年に渡って他の相続人とネガティブなコミュニケーションをしなければならなくなります。

 

私生活における面倒ごとや判断しなければならないものの数を極力減らすという思考も増えてきている傾向からすると,相続が発生したら,機械的に相続放棄をし,完全に無関係の立場を作るという人も出てくるのではないかと思います。

 

相続放棄は,遺産を相続することが原則であるとするならば例外処理にあたりますが,相続放棄の方が主流になるという可能性もゼロではないのかもしれません。

【相続放棄シリーズ】5 お悩みー後順位相続人への連絡

3月も後半になり,かなり気温が上がる予報も出てくるようになりました。

 

個人的には,今年は花粉も強くない感じがします。

 

別の理由でマスクは手放せませんが。

 

今回は相続放棄シリーズ5回目,相続放棄後の後順位相続人への連絡について取り上げます。

 

1 後順位相続人

相続は,順番が決まっています。

 

第1順位は,被相続人の子です。

 

第2順位は,被相続人の直系尊属(両親,祖父母など)です。

 

第3順位は,被相続人の兄弟姉妹です。

 

被相続人に子がいない場合,または先に死亡しておりその子(代襲相続人といいます)もいない場合,第2順位の直系尊属が相続人になります。

 

第2順位の直系尊属もいない場合(実際には既に死亡していて,いない場合が多いです),第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。

 

ちなみに,被相続人の配偶者は,常に相続人になりますので,順位は関係ありません。

 

2 後順位相続人は,順番待ちをしなければならない

先の順位の相続人がいる場合,後順位相続人には,まだ相続が発生しません。

 

先順位相続人が相続放棄をすると,初めて後順位相続人に相続が発生します。

 

そのため,後順位相続人の人は,先順位相続人が相続放棄をするまで,相続放棄手続を行うこと自体ができないのです。

 

言い換えますと,先順位相続人が相続放棄をしたことを知った日から,相続放棄の申述期限のカウントダウンが始まってしまいます。

 

3 後順位相続人への連絡

先順位相続人が相続放棄をしたことを知った日とはなんでしょうか。

 

厳密にいえば先順位相続人から相続放棄をしたことを口頭で聞かされた日であっても,これにあたります。

 

しかし通常,裁判所に対して,先順位相続人が相続放棄をしたことを知った日を裏付ける資料を付けることが多いので,日付入りの書面で通知をすることが多いです。

 

弁護士であれば,先順位相続人の代理人として相続放棄を行った後,先順位相続人に代わって後順位相続人へ連絡をすることがよくあります。

 

そうしないと,知らないうちに後順位相続人に(利用価値の少ない)不動産の所有権が移っていたり,債権者からの支払い催促がなされてしまうことがあり,後順位相続人の方に不要な不安が生じてしまうことがあるためです。

【相続放棄シリーズ】4 お悩みー質問状対応

我が国において3月から4月は,年度が変わる時期でもあり,とてもあわただしい場面もあります。

 

法律関係の手続きなどでもお忙しい方がたくさんいらっしゃるかと思います。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所で相続案件を中心に取り扱っている,鳥光でございます。

 

さて,今回で相続放棄シリーズも4回目となります。

 

以外と知られていない,そして多種多様なパターンがある,相続放棄に関する質問状(照会書兼回答書)について,お話をします。

 

1 質問状(照会書兼回答書)について

相続放棄の手続きと聞くと,相続放棄申述書とその付属書類を裁判所に提出することを想像する方が多いと思います。

 

もちろん,これも相続放棄の手続きに必要な行為ですが,一部に過ぎません。

 

相続放棄は,相続放棄申述書を裁判所に提出しただけでは終わりません。

 

裁判所は,相続放棄申述書を受取ると,書類の内容を審査します。

 

そして,審査がある程度の段階まで進むと,基本的に裁判所は,申述人に対し,書面で質問をします。

 

照会書兼回答書という名称で送付されてくることが多いです(裁判所によって運用が異なる)。

 

質問の目的は,申述人が本当にその意志で相続放棄の手続きを行っているか(なりすましや強要でないか),法定単純承認事由に該当する行為を行っていないか,を確認することにあると考えられます。

 

答え方によっては,相続放棄が認められなくなる可能性もあるので,回答は慎重に検討する必要があります。

 

2 質問状(照会書兼回答書)の送付先のパターン

質問状の送付は,裁判所によって運用が区々ですが,次の3つのパターンが多いです。

 

①申述人本人に対し,申述人の住所へ送付する(申述人が裁判所へ回答を返送する)

 

②代理人弁護士がいる場合,代理人弁護士の事務所宛に送付する(代理人が回答を返送する)

 

③代理人弁護士がいる場合に限り,そもそも質問状を送らない

 

仮に小職が相続放棄のご依頼をいただいた場合,①のパターンであれば,質問状のコピー等をいただき,内容を検討したうえで,回答を作成しアドバイスさせていただきます。

 

②のパターンであれば,小職が回答を作成し,裁判所へ返送します。

 

③のパターンであった場合は,質問状への回答によって相続放棄が認められなくなるリスクをゼロにできます。

 

手前味噌ですが,これは弁護士が代理人に就くことの大きな価値の一つです。

 

3 質問の内容

質問状(照会書兼回答書)に記載されている質問についても,裁判所によって区々です。

 

1,2問程度の簡単な質問しかしない裁判所もあれば,10問以上の質問をし,しかもやや専門的な内容が混じるような裁判所もあります。

 

どの裁判所がどのような運用をしているかは,申述を行ってみるまでわかりません。

 

経験上,申述人本人に質問状を送付する裁判所は,質問が多く,かつ高度なものである傾向があると考えられます。

 

代理人に質問状が来る場合,簡素なものであることが多いです(代理人により,事前に申述人に対するチェックが働いているという前提なのだと思います)。

 

申述人ご本人様に質問状が送付された場合,焦らず,専門家に内容を伝えて,回答を検討すれば安心です。

【相続放棄シリーズ】3 お悩みー金銭請求

春は暮らしやすいものの,天候が不安定な日もあり,外出や出張の際の持ち物に悩みます。

 

急な天候変化にはお気を付けください。

 

東京駅前にある弁護士法人で相続案件を扱っている鳥光と申します。

 

相続放棄シリーズ3回目となります。

 

今回は,被相続人に関する金銭請求についてお話します。

 

1 被相続人に関する金銭

被相続人がお亡くなりになった際,受取ることができるお金が発生することがあります。

 

典型的なものとしては,生命保険金,未支給年金,退職金などが挙げられます。

 

そして,相続放棄を検討されている方にとって,これが最も悩ましいものとなります。

 

2 被相続人に関する金銭を受取るべきか否か

相続放棄を検討する際,法定単純承認事由に該当する行為を行ってはいけません。

 

法定単純承認事由に該当する行為の一つとして,債権の取り立てがあります。

 

ここでいう債権とは,被相続人の債権であり,取り立てとは,お金を請求できる権利を行使してお金を受取ることです。

 

つまり,被相続人が亡くなられたことに伴って受取ることができるお金が,被相続人の債権に基づくものであった場合,受け取ってしまうと法定単純承認事由に該当する可能性があるのです。

 

そして,とても悩ましいことに,被相続人が亡くなった際に受取ることができるお金には,被相続人の債権に基づくものと,相続人固有の権利に基づくものがあります。

 

前者に該当する債権に基づくお金を受取ることはできませんが,後者に属する債権に基づくものであれば,そもそも相続財産ではないので受け取っても法定単純承認事由にはなりません。

 

被相続人が生前貸し付けていたお金の返済のために支払われる金銭などは前者に該当しますので,受取るべきではありません。

 

被相続人が契約者・被保険者で相続人が受取人となっている生命保険金,相続人を受取人として定めている死亡退職金・未支給年金,葬儀を主宰する者に支給する旨が条例等で定められている葬儀費用補助金などは,相続人等固有の権利ですので受取ることができます。

 

3 実務上の問題

受け取っても法定単純承認事由に該当しないお金について述べましたが,実務の現場ではもっと大きな問題があります。

 

それは,受取ろうとしている金銭が,本当に受取っても法定単純承認事由に該当しないものであるかを確定させることです。

 

抽象的に受け取ってよいお金とそうでないお金を述べることはできます。

 

しかし,本当に受け取ってよいかを厳密に判断するには,個別具体的に書類等を精査し,場合によっては会社や市町村の窓口まで行き,相続人固有の権利に基づく支払いである旨の確認まで取らなければなりません。

 

これはマンパワーの側面においても,容易なことではありません。

 

そのため,相続放棄検討段階では請求はせず,相続放棄を終えたあと,または並行して時間をかけて受け取れる金銭であるかを検討する方が良いです。

 

通常,相続放棄申述期限のうちに受け取らなければならないという金銭はないため,受け取れることが確定出来たら,ゆっくりと受取ればよいのです。

【相続放棄シリーズ】2 お悩み-債権者対応

3月は暖かい日,寒い日,雨の日,風が強い日が入り混じり,天気が安定しません。

 

外出の際の準備には悩みます。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所で相続案件を担当している鳥光でございます。

 

相続放棄シリーズ2回目は,相続放棄を検討されている方が非常に悩むことの多い,債権者対応についてでございます。

 

1 被相続人の債権者

債権者という言葉は専門的なので,具体的にはどのような人を指すかイメージが付きにくいと思います。

 

わかりやすいものとしては,クレジットカード会社,消費者金融,銀行などがあります。

 

その他,これら債権者に対して保証金を支払った事業者もいます(求償権の行使)。

 

保証会社は,消費者金融のように広く一般的に知られていないものですし,求償権の行使は法律構成がやや複雑になりますので,一見すると何を請求されているのか,専門家でないとわかりにくいこともあります。

 

また,債権者から回収を依頼された弁護士から連絡が来ることもあります(この場合,弁護士はあくまでも代理です)。

 

さらに,イメージしにくいですが,被相続人が税金を滞納していた場合,市町村等から支払い請求が来ることがあります。

 

この場合,市町村等も債権者です。

 

2 債権者からの通知

上記の債権者は,何かしらの形で,お金を支払ってほしいという連絡をします。

 

ほとんどの場合,書面で連絡があります。

 

圧着式のハガキや,封筒に,支払いを請求する旨の通知が記載されることが多いです。

 

たまに,地方などでは銀行の担当者が直接訪問してきて,被相続人負債の話をすることもありますが,最終的には書面を渡される形になります。

 

宛先は,被相続人になっていることもあれば,相続人になっていることもあります。

 

被相続人名義で送られる場合は,おそらく債権者が被相続人が亡くなったことを知りません。

 

つまり,相続人に債務が移っているという認識がありません。

 

宛先が相続人になっている場合,債権者は被相続人の死亡を知っているとともに,相続人の調査も行っています。

 

どちらが強いということはないのですが,後者はコストをかけて相続人調査をしているということを考えると,より請求する意思が高いとも考えられます。

 

3 相続放棄をする場合の債権者対応

① 検討段階

まだ相続放棄をすることを決め切っていない場合や,専門家への依頼を完了していない段階では,とにかく支払いに応じないことが大切です。

 

支払いに応じないといっても,通常であれば単に債権者からの通知をそのままにしておくだけで済みます。

 

仮に電話連絡などが来てしまった場合は,相続放棄を検討中であることだけ答えます。

 

たまに,申述期限が過ぎているからできない,などと言われることもあるようですが,下手に反論しないことが大切です。

 

② 相続放棄手続段階

実際に裁判所に対し相続放棄申述を行ったり,専門家に相続放棄を依頼した段階になっても,あまりやることは変わりません。

 

通知書面は基本的に手を付けずにおき,電話連絡等があった場合には相続放棄手続中である旨だけ答えます。

 

③ 相続放棄完了後

相続放棄が完了すると,裁判所から相続放棄申述受理通知書というものが届きます。

 

債権者に対しては,この写しを提供します。

 

通常,債権者側は相続放棄申述受理通知書の写しの提供を受けることで,回収不可能と判断し,その後の請求を止めてくれます。

 

とはいえ,債権者へ連絡することはとても勇気がいります。

 

特に債権回収の代理人が弁護士であったりすると,とても連絡がしにくいと思います。

 

そのような場合,小職は相続放棄完了後に,各債権者に対して債権の状況確認を行ったうえで,相続放棄申述受理通知書の写しを提供し,これ以上請求が起きないようにするサービスも行っております。

【相続放棄シリーズ】1 相続放棄にはご法度がある

3月に入り,暖かい日が増えてきました。

もっとも,この時期は例年花粉症に悩まされる時期であり,しかも今年はコロナウィルスの問題もあるので,外出には気を付けたいところです。

東京駅前にある弁護士法人心にて,相続案件を扱っている,鳥光でございます。

相続放棄に関する相談を受けることが非常に増えたことから,今後ブログにて相続放棄に関する情報を発信していこうと考えております。

今回は,第1弾として,相続放棄を検討している段階において,行ってはならないことをまとめます。

1 原則

相続財産の処分をしてはいけません。

これを行うと,相続放棄が認められなくなります(法定単純承認事由)。

2 処分って何?

もっとも,条文には「処分」としか書いておらず,具体的に何が処分にあたるかについては,未だ明確になっていません。

不動産の名義変更をして売り払ったり,預貯金の払い戻しを受けて自分のために費消することは,処分の典型にあたりますので,絶対に行ってはならないということはわかります。

しかし,(普通に考えればゴミのような)残置物を処分したり,亡くなった人の携帯電話の解約をしたり,公的な支給金を取得したり,被相続人の宛ての請求の支払い等についてはいかがでしょうか。

これらについては,通説,実務上は法定単純承認事由とならないケースもありますが,明確に条文や判例において認められているわけではないので,非常に悩ましいと言わざるを得ません。

ネット上には様々な情報が存在しています。

そのほとんどは正しい情報であると考えられますが,抽象的なものであるため,実際にご自身が行おうとしている行為が本当に法定単純承認事由に該当しないか否かは,個別具体的に当てはめを行って判断しなければならず,簡単には判断できないのです。

これは私見ですが,相続放棄はここ数年で急激に増えていることもあり,相続放棄制度に付随する上記問題について,法整備が追い付いていないのではないかと感じることもあります。

3 では,どうするか?

相続放棄の可能性があるならば,とにかく,余分なことをしないという意識を持つことが一番重要です。

極論すれば,被相続人がお亡くなりになったことを知った際,とりあえず何もしないのが一番安全です。

さらに言えば,被相続人がご存命のうちから,相続放棄制度について理解し,うっかり法定単純承認に該当しそうな行為を行ってしまわないように予備知識を入れておくことが大切です。

音信不通で疎遠な親族がいる場合にも同じことが言えます。

当該親族が亡くなると,突然相続人に対して借金や滞納家賃等の請求が来ることもあります。

そのような時に,相続放棄の知識がないと,焦って請求に応じてしまい,後戻りが困難になる可能性もあります。

しかし,現実には,相続放棄のご相談をいただいた時点において,すでに法定単純承認事由に該当するかもしれない行為を行ってしまっているケースの方が多いです。

そのような場合,事情を詳しくお聞かせいただき,法律構成の仕方によっては,相続放棄が認められるようにできる可能性もありますので,ぜひご相談ください。

相続放棄をお考えの方はこちら

実践・生前整理 2

2月に入り,寒さもあと少しという感じになってきました。

 

もっとも,その後は花粉の季節になりますので,色々と対策が必要ですね。

 

東京駅前にある法律事務所で相続案件を扱っている,鳥光と申します。

 

生前整理シリーズ第2弾です。

 

今回は,持ち物を減らすことで,法律関係を整理,最小化するというお話をさせていただきます。

 

この写真は,以前泊りで出張した際に携行した財布類と時計です。

 

 

財布類は,アブラサスの薄いマネークリップと,小さい小銭入れです。

 

これらは,いわゆるミニマリストと呼ばれる方々に大変人気がある品です。

 

マネークリップには,カードが5枚しか入りません。

 

このような財布を使うと,必然的にカードの枚数を減らすことになります。

 

具体的には,クレジットカードとキャッシュカードを絞らなければなりません。

 

ポイントカードもなくしていく必要があります。

 

クレジットカード,キャッシュカード,ポイントカードを減らすと,当然法律関係も減らせます。

 

財布類をミニマライズすることは,物と法律関係を減らすことに直結します。

 

時計はクォーツ式のもので,そこまで高価なものではありません。

出張の時は便利なので使っています。

 

これ以外に,機械式の時計を2つ持っています。

 

機械式の時計の方は,やや財産的価値があるので,1箇所に纏めておき,仮に私が死亡した際,相続人が換金等をしやすくしてあります。

 

 

これは,出張に着て行った衣類です。

 

 

冬はインナーにダウンを着ます。

 

冬以外のシーズンはダウン無しで着ます。

 

こうすることで,コート類を持たずに済み,残置物となり得るものを減らせます。

 

スーツは,以前は10着近く持っていましたが,現在は4着です(うち1着は,ユニクロの感動ジャケットと感動パンツです)。

 

仕事はスーツを着るほか,普段もちょっとした外出の時はスーツを着てしまいます。

 

仕事着を普段も使いまわすことで,衣類も減らすことができます。

 

このようにして,私の所有権に属するものを最小化します。

相続放棄と金銭請求手続き

2月に入り,暖かい日と寒い日が入り混じるようになりました。

 

急に寒くなったり,雪が降るような日もありますので,体調管理には気を付けたいところです。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所で相続案件を中心に取り扱っている,鳥光でございます。

 

去年から相続放棄の取扱件数が非常に増えております。

 

相続放棄は,手続きそのものは単純ですが,付随する問題はたくさんあり,それに対する対処は簡単ではありません。

 

その中でも,特に相続人を悩ませるのが,死亡保険金や公的機関からの給付金・還付金等の類です。

 

なぜなら,相続放棄という制度は,法定単純承認に該当する行為をすると認められないというルールになっているためです。

 

この法定単純承認に該当する行為の中には,被相続人の債権の取り立てが含まれるとされています。

 

つまり,請求をして受け取った金銭の中に,被相続人の債権に基づくものがあると,相続放棄が認められなくなる可能性が出てきてしまうのです。

 

本当に保守的に考えるのであれば,すべて一切受け取らないという選択を取ることになります。

 

しかし,死亡保険金などは,100万円を超えるものもあり,切り捨てるには惜しいものでもあります。

 

そこで,ご相談をいただくことが多い,死亡保険金・死亡退職金,葬祭費の給付金,未支給年金について,一般的な考え方を案内いたします。

 

1 死亡保険金・死亡退職金

 

契約者・被保険者が被相続人,受取人が相続人となっているものは,受け取ることができます。
言い換えますと,相続人固有の権利となっている場合,相続財産ではないので,受け取っても法定単純承認事由には該当しません。

 

2 葬祭費の給付金

被相続人の葬儀費について,喪主や相続人に対して市区町村より補助金が給付されることがあります。
これについては,条例でもって葬儀を主宰する者に支給するという条文が通常ありますので,これに該当する給付金であれば受け取ることができます。

 

3 未支給年金

未支給年金とは,被相続人に支払われるはずであった年金のうち,支払い日までに被相続人が死亡してしまった場合に給付される年金です。
これについては,法律で受取人の順位が決められており,その受取人固有の権利とされるので,受け取ることができます。

 

しかしながら,実務の現場では,さらに大きな壁があります。

 

考え方を知っていることと,請求しようとしている金銭が法定単純承認事由に該当しない法的性質のものであると確定できることとは,全く別の問題です。

 

死亡保険金・死亡退職金は,契約の内容によっていくらでも性質が変わってきますし,会社によって書き方や表現の仕方も変わるので,個別具体的に確認しなければなりません。

 

公的機関から受け取ることができる金銭についても,都度何の法律のどの条文に基づくものであるかを,できれば窓口で確認し,支給の根拠条文が記された書面をもらいたいところです。

 

上には記載しませんでしたが,高額医療費の還付金などは,より複雑です。

高額医療費の還付金は世帯主に支払われるものです。

高額医療費を支出した人が世帯主であり,亡くなった場合,相続人を世帯主に変更すると,一見相続人固有の権利として還付金を受取れそうに見えます。

しかし,高額医療費の還付金を請求できる権利が確立した日が,被相続人死亡日前であったりすると,還付金請求権が被相続人の債権ともなり得ます。

こうなると,請求することは差し控えた方がよいということになります。

実践・生前整理 1

ブログをご覧いただき,ありがとうございます。

 

相続案件をメインに取り扱っている弁護士の鳥光と申します。

 

相続の中においても,相続に関わる手続き,生前整理・生前対策に力を入れております。

 

生前整理は,遺産分割における争いを予防し,仮に争いになったとしても長期化・激化を抑える働きがあります。

 

生前整理という言葉は抽象的ですが,相続における紛争予防の観点からは,以下3つを行うことであると考えております。

 

①相続財産として通常価値のない物(衣類や家電,日用品など)をとにかく最小限にする

 

②価値のある財産(預貯金等の金融資産,不動産,その他価値ある動産)をリスト化する

 

③②の財産をシンプル化する

 

生前対策をアドバイスする上で,私自身,自宅の物を最小化(ミニマル化)する取り組みを行っております。

 

自分が死亡した際,相続人や関係者が残置物の処分に困らないよう,とにかく家財道具は減らせるだけ減らしました。

 

自宅のエントランスです。

洗濯機くらいしか置いておりません。

 

 

 

部屋には,デスクと寝床,あとは写真には写っておりませんが,メタルラックが一つあるのみです。

 

 

 

衣類も,これでほぼ全てです。

 

 

 

写真には写せませんが,金融資産に関する情報や,アンティークコインなど財産的価値のある動産は一か所に集約しています。

 

現在不動産は有しておりませんが,仮に不動産を購入したのであれば,売買契約書や登記簿,権利証(登記識別情報)等も一か所にファイリングします。

 

そして,手書きでもよいので,これらの財産をリストアップした表(財産目録)も作っておきます。

 

今後は,銀行口座の数や,クレジットカードの数を減らし,法律関係の最小化を進めていきます。

相続放棄は簡単?

新年が明けまして,令和も2年目に入りました。

 

東京で相続を中心に取り扱っている,弁護士の鳥光と申します。

 

今年もよろしくお願いいたします。

 

ここ数年,相続放棄がとても増えています。

 

亡くなられた親御さんが多額の借金を有していたため,突然金融機関から多額の請求をされ,大変な不安を抱えながらご相談に来られる方も多いです。

 

相続放棄は,本当は簡単な手続きではありません。

 

申述書の書き方,裁判所からの質問状への回答,相続放棄が完了するまでの残置物や債権者への対応,相続放棄完了後の債権者からの訴訟リスク対応等,どれか一つ間違えても,相続放棄が認められなかったり,親の借金を背負うことになってしまったりします。

 

また,相続放棄の代理人になれるのは弁護士のみです。

 

相続放棄申述書を裁判所に提出すると,裁判所から質問状が送付されてきます。

 

この質問状は十数問に渡る複雑なものである場合もあり,回答の仕方次第では,相続放棄が却下されるリスクがあります。

 

送付先は本人の場合もあれば,代理人の場合もあります。

 

代理人がいない場合(ご本人または弁護士以外に相続放棄を頼んだ場合),質問状は本人に送られてきます。

 

代理人に送付された場合,ちゃんと相続放棄が認められる内容で回答することができます。

 

さらに,代理人が就いていると,裁判所によっては質問自体をせずに受理してくれることもあります。

 

ご本人に質問状が送られたとしても,代理人がいれば質問の趣旨等を代わりに裁判所に問い合わせたうえで,的確な回答作成をサポートすることができます。

特に,被相続人の死亡から3か月以上経過している場合や,遺産分割協議など法定単純承認事由に該当する行為を行っている場合,過去の審判例などを引用したうえで,疎明資料を添付し,必要に応じて代理人として裁判所と電話や書面のやり取りを行います。

 

私は,被相続人が亡くなってから5か月経過しており,かつ被相続人の預貯金でもって被相続人の債務を返済してしまったケースにおいても,事情を詳しくお聞かせいただき,相続放棄が認められる法律構成を行い,裁判所に対して上申書等を提出した結果,無事相続放棄を認めてもらうことができた実績もあります。

 

相続放棄でお悩みの際は,ぜひご相談ください。

相続の観点でのミニマル化の注意点

ここ数日で急激に下がり,冬も本番といった気候になってきました。

 

東京駅前で相続案件を取り扱っている,弁護士の鳥光と申します。

 

今日もアクセスをいただき,ありがとうございます。

 

先日は,持ち物を最小限に減らす生活スタイルのお話をしました。

 

持ち物を減らす過程においては,通常ウェブサービスなどを利用し,紙媒体等の物理的な存在をIT化によって減らしていくことが多いです。

 

契約書類しかり,金融機関の通帳やカード等しかりです。

 

一般的には,物が少ないほど,その人が亡くなった時に相続人が苦労しないで済みます。

 

もっとも,IT化については注意が必要です。

 

やや極端な例ですが,仕事上の契約書や預貯金のサービスなどをスマホ1つに集約している場合,そのスマホを操作できる人が亡くなってしまうと,財産の情報を調査することが非常に困難になります。

 

仮にスマホ自体は見ることができたとしても,ウェブ上のサービスはIDとパスワードが求められることが大半ですので,これらの情報がわからないと調査ができません。

 

IDやパスワード等の情報を解析するサービスも存在しますが,確実にID・パスワードを割り出せるとは限りません。

 

そのため,もしもの時のために,保有している資産の情報と,これらにアクセスする手段だけは紙媒体等アナログな形で残しておき,信用できる人に保管場所を教えておく等の対応が必要です。

 

または,遺言を作成することが有効です。

 

遺言を作成する過程においては,自身が保有している財産を洗い出す必要があるためです。

 

もっとも,遺言では,契約の名称やその相手方,預貯金がある金融機関等は特定できますが,IDやパスワードは記載しません。

 

そのため,ID・パスワードは別の媒体に記載し,遺言の付言事項等にその保管場所を記載するといった対応をすることが考えられます。

相続人のためのミニマル化

今年も年の瀬となりました。

 

取引先へのご挨拶,会計処理,連休前のタスク消化など,お忙しい方も多々いらっしゃるかと思います。

 

今回もブログをご覧いただき,ありがとうございます。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所にて,相続案件を担当している鳥光でございます。

 

小職は,昨年から持ち物,法律関係を整理し,必要なもののみに絞っていくという活動をしております。

 

いわゆる,ミニマリストと呼ばれる生活態様を目指しております。

 

持ち物,法律関係を最小限にすることで,自分が何をどれだけ持っているか,どことどのような法律関係にあるか(特に金銭債権・債務があるか),ということを正確に管理できるようになります。

 

このことは,一般論として,相続を円滑にすることにもつながります。

 

相続が発生した際,初めに相続人を悩ませるのが,相続財産の洗い出しだからです。

 

預貯金がどこにどれだけあるのか,不動産を所有しているか否か,所有しているのであればその資料はどこにあるのか,貴金属など金銭的価値のある動産があるのかなど,被相続人が所有している物や法律関係が多ければ多いほど,調査しなければならないことが増えます。

 

また,財産的価値のない残置物などは,処分に手間もお金もかかり,その費用を巡って相続人間で争いになることもあります。

 

小職自身,明日事故などに遭って死亡する可能性もゼロとは言い切れません。

 

明日自分が死ぬ可能性があることを念頭に置き,その後の家族の負担をどれだけ減らせるかという観点で,日頃から整理しております。

生前整理と相続人の負担の軽減

東京駅法律事務所にて,相続案件を中心に担当している鳥光と申します。

 

相続を円滑に進めることと,自身の所有物や法律関係を生前に整理・片付けを行うことは,とても密接な関係があります。

 

一言で申しますと,被相続人がお亡くなりになった時の財産がシンプルであるほど,相続財産調査,残置物処分が楽になるため,相続手続きは円滑に進みます。

 

富裕層における相続税対策等の観点をひとまず措きますと,相続財産が預貯金等のみである場合が最も円滑に手続きを進められます。

 

動産は,少なければ少ないほど良いです。

 

残置物の処分の手間・費用が少なくて済みますし,相続放棄を検討する際にも悩む必要がなくなるためです。

 

不動産があると,相続手続きの手間はグッと増えます。

 

まず,登記簿や固定資産税通知書を探し,相続財産である不動産の正確な情報を割り出さなければなりません。

 

そのうえで,評価額を算定し,誰が当該不動産を取得するかを決め,遺産分割協議書作成後,相続登記を行うことになります。

 

相続放棄をする場合には,不動産があると管理責任が残りうるため,相続財産管理人の選任申立ても検討しなければなりません。

 

この場合,手続きを代理人に依頼する場合には手数料が必要ですし,裁判所に対しても多額の予納金を納めなければならず,相続人の負担はとても大きくなります。

 

人間は,いつ亡くなるかわかりません。

 

特に高齢になればなるほど亡くなる可能性は高くなっていきます。

 

若い方ももちろんですが,高齢に差し掛かった方こそ,日頃から不用品の片付けを心掛け,相続人が使うあてのない不動産は早めにお金に換え,使っていないカード類を解約しておくなどをしておくことで,相続人の苦労を事前に減らすことができます。

生活のミニマル化と相続

アクセスありがとうございます。

 

東京駅法律事務所で相続案件を担当している弁護士の鳥光と申します。

 

数年前から,ミニマリストという言葉が登場してきた記憶があります。

 

明確な定義は無いと思慮しますが,自らの生活にとって必要十分な物・法律関係のみを持って生活する人,というニュアンスだと思います。

 

このようにすることで,自分は何をどれだけ持っているのかが明確になり,管理の労力が減るという効能があります。

 

相続の観点からは,ミニマリストの趣旨と,生前整理・終活は非常に相性が良いと感じております。

 

著名なミニマリストの方も,(まだお若いのに)終活についてのご意見を述べていたりします。

被相続人が,生前整理として,必要最低限の物のみを持つようにして,所有物・法律関係を最小化しておけば,お亡くなりになった際,相続人が遺産を整理することが容易になり得ます。

 

預貯金等を1つの金融機関に纏めておけば,通帳やカードも1つで済み,口座の名義変更手続きも1回で済みます。

 

動産を極力減らしておけば,処分は簡単です。

私自身,昨年までは物を多く持っていましたが,かなりの量の処分をしました。

 

その過程で,預貯金等の金融資産の棚卸や,ほとんど使っていないクレジットカードの解約等も行いました。

 

自分が次の日,交通事故などで死ぬかもしれないと仮定して,自分の相続人が困らないようにするにはどうしたらよいか,という観点で片付け,整理を行っております。

 

通帳などの財産状況がわかる資料は一か所に纏め,自宅の賃貸借契約書など法律関係に関わる書類は纏めて一つのファイルに綴じました。

 

このような準備をしたうえで,遺言を作成し,付言事項に書いておけば混乱が起きにくいと考えております。

予防法務と相続放棄 その2

弁護士法人心東京駅法律事務所にて,相続案件を中心に担当している鳥光と申します。

 

さて,前回に引き続き,相続放棄における生前対策のお話です。

 

前回,相続放棄には次の2つの特徴があるため,事前に抑えておかなければならない点がある旨を書きました。

 

 

1 申述期限が相続開始を知った日から3か月以内と,非常に短いこと

 

2 相続放棄が認められなくなる行為をしてはならないこと

 

 

今回は,2についてお話をいたします。

 

相続放棄は,法定単純承認に該当する行為をしてしまうと,認められなくなります。

 

法定単純承認に該当する行為とは,相続財産の処分です。

 

すなわち,被相続人の財産を売却したり,廃棄したり,自分の名義に換えることをしてしまうと,相続放棄ができなくなる可能性が発生してしまいます。

 

また,積極財産だけでなく,被相続人宛ての請求(負債)に応じて支払いをすることも法定単純承認に該当する行為になることがあります。

 

財産を処分した後でこのことを知っても,取り返しがつきません。

 

そのため,相続が発生する前に,このことをしっかり抑えておく必要があるのです。

 

しかしながら,一点難しい問題があります。

 

それは,相続財産の処分には,どのようなものが含まれるのか,という点です。

 

わかりやすい例としては,相続人が被相続人の預貯金を引き出して私利私欲のために費消したり,金品や不動産を売却してしまうことが挙げられます。

 

他方,被相続人の住居にある残置物の処分はどうでしょうか。

 

残置物は,たとえ再販価値がほとんどなくとも,被相続人の所有物であったものなので,相続財産の一部です。

 

生ごみや紙くずなどの明らかなゴミなら処分してよいのか,古い家電は処分しないでおくべきなのか,かなり悩ましいのが現実です。

 

特に被相続人が賃貸物件に住んでいた場合などは,賃貸人や管理会社との関係でも,早く処分して明渡したいと感じるのが人情です。

 

他にも,被相続人あての水道光熱費の請求なども,支払ってしまいたくなると思います。

 

しかし,踏みとどまっていただく必要があります。

 

このような場合,基本的には一切手を付けず,債権者から何らかの連絡が入った場合には相続放棄手続き中である旨を伝えていただくのが安全です。

 

そのうえで,賃貸人などの債権者に掛ける迷惑をどのように低減するかを検討します。

 

相続放棄は,手続き自体は複雑ではありません。

 

しかし,相続放棄を検討されている方が置かれている状況は,複雑かつ悩ましいケースが多いと感じます。

 

安心して相続放棄を行うために必要な事前対策はケースバイケースですので,相続放棄を検討しようと思い立った段階でご相談をいただくのがベストです。

予防法務と相続放棄 その1

東京は台風も通り過ぎ,秋らしい気候になってきました。

 

一日の中での気温の変化が大きいので,体調管理には気を付けたいところです。

 

数年前から,「予防〇〇」という言葉をよく耳にします。

 

なじみのあるものとして,予防医学というものがあります。

 

これは,病気になってから治療をするのではなく,予め病気にならないように備える行動をするというものです。

 

法律全般についても予防法務という言葉があります。

 

紛争が起こってから法的に解決するのではなく,予め法的な紛争が起こらないようにするというものです。

 

そして相続についても同じことが当てはまると感じます。

 

相続の場面でいえば,「生前対策」と言い換えることもできます。

 

生前対策と一言で申しても,かなり幅が広いです。

 

遺産分割の争いを予防するために遺言を作成する,相続税の支払い資金を用意するため生命保険に入る,など様々なものが考えられます。

 

今回は,次回との2回に渡り,相続放棄についての生前対策を考えてみます。

 

相続放棄と生前対策は,一見結びつかない感じがします。

 

しかし,相続放棄には,事前に抑えておかなければならない点がたくさんあります。

 

その理由は,相続放棄には以下の2つの特徴があるからです。

 

1 申述期限が相続開始を知った日から3か月以内と,非常に短いこと

 

2 相続放棄が認められなくなる行為をしてはならないこと

 

まず,1につきまして。

 

相続放棄は,裁判所に提出する申述書を作成しなければならないことに加え,戸籍謄本類などを公的機関から取り寄せなければなりません。

 

ご兄弟の相続放棄などは,取り寄せる資料が多く,非常に時間と手間がかかります。

 

申述期限が非常に短いため,被相続人が亡くなった(相続が開始した)ことを知ってから相続放棄のことについて調べたり,検討を始めたりすると,相当タイトなスケジュールで資料入手やその後の手続きを行わなければなりません。

 

平日日中にお仕事をされている方であれば,かなりの無理を強いられる可能性もあります。

 

そのため,例えば多額の借金を抱えている親御さんが亡くなりそうで,相続放棄をする可能性があるのであれば,予め必要な書類や手続きを確認しておき,お亡くなりになられたらすぐに相続放棄のための行動を開始できるようにしておく必要があります。

 

次回は,2について説明いたします。

相続財産調査の労力

相続財産調査は,遺産分割および相続税申告(相続税が課せられるか否かの調査含む)の両方で必要な手続きです。

 

相続財産調査は,相続人ご本人様でも行えます。

 

むしろ,未だ相続財産調査を相続人ご本人様に行っていただく方が主流かもしれません。

 

客観的な視点からは,相続人ご本人様が調査を行う方が,手間は少ないです。

 

金融資産の調査においても,不動産の評価についても,相続人ご本人様が行う方が代理人への委任等の作業を省けるので,手続きは少なくなります。

 

しかし,相続人ご本人様が相続財産調査を行う場合,主観的な部分において,壁となるものが2つあります。

 

1つは,相続財産調査の前工程である相続人調査です。

 

正確には,ご自身が相続人であることを公的に証明する資料である戸籍謄本類の収集です。

 

これがないと,金融機関等は相続財産調査の照会に応じてくれません。

 

ご自身や被相続人の死亡時の戸籍を取得することはそれほど難しくありませんが,被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集することは簡単ではありません。

 

もう1つは,時間の確保です。

 

戸籍謄本類を取り寄せる市役所等は,基本的には平日日中しか開いていないことが多く,金融機関は平日の15時までしか窓口を開いていないことが多いです。

 

既に定年等によりお時間を確保しやすい状況の方であればまだしも,現役でお仕事をされている方がお仕事の合間に,あるいはお仕事を休んで市役所や金融機関に行くのはとても大変です。

 

このような壁にお悩みの方は,後に行う遺産分割の協議や相続税申告等含め,相続財産調査を専門家に依頼するのが良いと考えられます。

 

相続人調査はもちろん,金融機関の名称や不動産の所在地などについて,正確ではなくてもある程度の情報をいただければ調査は可能です。

東京で相続でお困りの方はこちらをご覧ください。

地銀,信用金庫の調査

涼しい日も増えて参りましたが,まだ時折30℃を超える日もあります。

 

熱中症にはご注意ください。

 

先日,仕事で静岡県浜松市の裁判所に行って参りました。

 

初めての場所であったことと,裁判所の期日が午前の早い時間に行われる予定であったことから,期日前日に浜松へ行き,現地を散策しました。

 

私は相続に関わる仕事の中でも,相続財産調査,特に金融資産の調査を行うことが多々あります。

 

相続財産調査を弁護士が行うことで,その後の遺産分割の進め方も同時並行で検討することができるため,遺産分割協議を早期に解決することが可能になることもあります。

 

そのため,仕事柄,現地の地銀や信用金庫を見ると,ついチェックしてしまいます。

 

 

 

弁護士法人心東京駅法律事務所がある東京の八重洲周辺は,全国の金融機関の支店が集中しております。

 

金融資産の調査を行う上で非常に便利なので,早く正確な調査ができます。

 

金融機関に対する財産の照会は,一般的には郵送で行うことが多いです。

 

しかし私は,可能な限り直接窓口に行くという方針を採っております。

 

直接窓口に行って,申請に必要な書類の書き方等を綿密に確認した方が,結果として手戻りを減らすことができ,迅速な調査につながるためです。

 

東京の八重洲付近にない金融機関については,出張などの機会に現地調査をし,密にコンタクトを取り,正確性と迅速性を確保しています。

相続財産の評価

暑い日が続いております。

 

東京は気温が高いだけでなく,アスファルトやコンクリートが熱を吸い,夜に放出する関係で,夜になっても気温が高いままです。

 

熱中症には十分にお気を付けください。

 

さて,遺産分割協議を行うにあたり,相続人間で具体的な分割の話をする前に行わなければならないことは,相続財産の確定です。

 

相続財産には「何」があり,それは「いくら」なのか,を確定させます。

 

今回は「いくら」の部分についてお話をさせていただきます。

 

預貯金や不動産,株式など,被相続人の財産がわかりましたら,これがいくらになるのか,評価額を調べる必要があります。

 

理由は,相続人間での遺産分割の公平性を確保するためです。

 

例えば,相続人が兄弟2人だけで,法定相続割合に従って2分の1ずつ相続財産を分けるとします。

 

その際,相続財産すべてを金銭に評価し,総額を明らかにしないと,それぞれの相続人が本当に法定相続割合に基づいて相続財産を取得できているかを客観的に判断することができません。

 

仮に兄が現金と預貯金,弟が土地と株式を取得するとした場合,土地と株式の金銭評価額が明らかになっており,兄が取得する現金預貯金と同額であれば,お互いに納得することができます。

 

具体的な評価について,預貯金は被相続人死亡時の残高がそのまま評価額になるので問題ありません。

 

株式,投資信託についても,被相続人死亡日の価格が評価額になります。

 

証券会社に依頼することで,当時の価格を記載した書面を発行してもらえます。

 

問題は不動産です。

 

不動産の評価額を表すものは,いくつもあります。

 

固定資産評価額,路線価,公示価格,不動産鑑定士による鑑定額,不動産業者による査定額などです。

 

遺産分割においては,どの評価額を使うかは決まっておりません。

 

極端なことをいえば,相続人間で合意が取れれば,いくらでも構わないのです(遺産分割における評価額と,相続税評価額は別物です)。

 

しかしながら,不動産の代償分割においては,評価額は争いのポイントとなり得ます。

 

不動産の代償分割とは,相続人の一部が不動産を取得する代わりに,他の相続人に対して金銭の支払い等を行う分割方式です。

 

例えば,相続人が子3人,相続財産が評価額3000万円の土地のみである場合を考えます。

 

法定相続割合に従えば,相続人一人あたりの相続分は金額に換算して1000万円ずつとなります。

 

このとき,相続人の1人が土地全部を取得し,その相続人が他の2人の相続人にそれぞれ1000万円ずつ支払う(これを代償金と呼ぶことがあります)ことで,全員が1000万円ずつ取得したことと同じになります。

 

これが代償分割です。

 

このケースにおいては,土地全部を取得する相続人としては,評価額をできるだけ下げたいという気持ちが働くのが人情です。

 

仮に評価額が2400万円であれば,他の相続人に対して800万円ずつしか支払わなくて済むからです。

 

逆に,代償金を受け取る相続人は,当然評価額を高くしたいと考えます。

 

この折り合いがつかず,調停になることさえあります。

 

経験上,一般的に相続人間で納得しやすい評価額は,都心部であれば市場価格に近い価格,地方の小規模な市町村で買い手が募りにくい場合は相続税評価額や固定資産評価額です。

 

市場価格に近い価格とは,複数の不動産業者へ査定をお願いして出していただいた価格の平均値などです。

 

簡易的には,固定資産評価額を0.7で除するということでも市場価格に近い価格を算出できます。

 

調停になった場合,折り合いがつかないときには不動産鑑定士に鑑定を依頼することもありますが,費用が高額になるので,できるだけ避けたいところではあります。

 

遺産分割は勝ち負けではなく,互譲による調整で進めていくものです。

 

遺産の評価額においては,お互いが何とか認めることのできる中間的価格を,合理的な裏付けを以て示していくということが大切です。

 

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相続時における相続人調査の必要性

今年も例年通りの猛暑となりました。

 

熱中症で体調を悪くされる方もたくさんいらっしゃいます。

 

ブログをご覧いただいている皆様方におきましても,どうかお体をご自愛下さい。

 

弊所は東京駅のすぐ近くにございますが,それでも八重洲北口から徒歩3~4分はかかります。

 

その間を歩くだけでも汗だくになってしまいますね。

 

さて,今回は相続案件で必要な書類のうち,戸籍謄本類に関するお話です。

 

相続のご相談をいただき,実際に受任させていただくと,初めに行うことの一つは相続人の確定です。

 

戸籍謄本類を取り寄せ,亡くなった方の相続人を調べます。

 

亡くなった方の相続人が誰であるのかについては,事実上はわかっている場合が多いです。

 

両親と兄弟だけの核家族で育った方であれば,親御さんが亡くなった際の相続人は,もう片方の親と自分と自分の兄弟だけに決まっていると考えるのは当然です。

 

しかし,戸籍謄本類をもって確認するのには,2つの理由があります。

 

1つは,確実な裏付けを取ることです。

 

万一,親御さんが過去に離婚しており,離婚の相手との間に子がいたりすると,その人も相続人になってしまいます。

 

このことを,被相続人の家族が知らなかったりすると,相続人が漏れてしまいます。

 

遺産分割協議は,相続人が1人でも欠けると成立しませんので,初めの段階で確実に確認しておく必要があります。

 

もう1つは,相続財産調査や手続きにおいて,相続人であることを公的に証明することです。

 

たとえば金融機関で被相続人の預金残高を教えてもらおうと考えた場合,いくら自分が被相続人の相続人であると口頭で伝えても,金融機関側からすると本当のことを言っているかが判断できません。

 

相続人でない方に口座の情報を漏らしてしまったということになれば大変なことになりますので,預金残高の開示には応じられないことになります。

 

そこで,自分が被相続人の相続人であることを公的に証明する書類として戸籍謄本類を示すことで,金融機関側も安心して情報を提供することができます。

 

戸籍謄本類に近しい存在として,法定相続情報一覧図というものがあります。

 

これは,簡単にいうと,公的に証明された家系図のようなものです。

 

戸籍謄本類と申請書等を行政機関に提出することで,発行してもらえます。

 

法定相続情報一覧図は,自分が被相続人の相続人であることを証明できる書類です。

 

従前は,被相続人の残高証明を取得する際など,金融機関等に対して戸籍謄本類の束を提示しなければならなかったところ,法定相続情報一覧図があれば1枚で対応できます。

 

ただし,法定相続情報一覧図を取得するには,戸籍謄本類を全て揃えなければならないので,手間の大きさは変わりません。

 

戸籍謄本類の取り寄せはご自身でも可能です(形式的にはご自身で取得されるのが原則です)。

 

しかし,戸籍の読み方,遡り方などについては,ある程度の知識が必要です。

 

弁護士の場合は,受任した相続案件に必要な範囲内で,戸籍謄本類が取得できます。

 

相続が発生した場合,相続人調査・確定も含め,専門家に依頼するのも手です。

 

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