相続財産管理人日誌21

いつも本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての21回目の記事となります。

 

相続財産の調査や裁判所の手続きが一通り終わると、しばらくは、相続人とされる方が名乗り出るのを待つ等の期間があります。

 

その間も、財産の動き等がないかについては、注視が必要です。

 

不動産がある場合は、時折現場を確認し、必要な措置を行うべきです。

 

雑草などの植物が茂ってしまうと、近隣の方に迷惑がかかることがありますので、必要に応じて刈り取るなどの対応をします。

 

自宅など、建物がある場合、台風や地震などでダメージを受けることがあります。

 

破損個所がないか定期的に確認し、簡単な破損であればテープなどで補強する、大きな破損であれば業者を手配するなどの対応が必要です。

 

害虫の発生にも注意が必要です。

 

特に蜂や毛虫など、危険な虫が発生していないかを確認します。

 

私は、定期的に庭や家の中に殺虫剤を撒くようにしています。

 

もっとも、蜂がいることが明らかな場合については、殺虫剤をかけるとかえって危険であるため、専門の方に相談しています。

 

そのほか、玄関ドアや門などに、相続財産管理人の管理下にある旨の貼り紙等をしている場合は、汚損していれば取り替えます。

相続財産管理人日誌20

毎度本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての20回目の記事となります。

 

前回に引き続き、祭祀財産等についてお話しします。

 

被相続人の方が遺されたお墓、お仏壇、ご位牌、ご遺骨等は、祭祀財産という枠で扱われるため、通常の相続財産とは性質が異なります。

 

これらの財産の面倒を見る方がいらっしゃらない場合、被相続人と関係があったお寺さんなどと相談し、墓じまいをする、永代供養をしてもらうなどの措置が必要になります。

 

もっとも、本来的には、これらにかかる費用は、相続財産から当然に支払うものではありません。

 

しかし、現実的には、祭祀財産を放置するわけにもいきません。

 

そこで、実務上は家庭裁判所と協議をし、可能であるならば相続財産から永代供養費等を支出する許可をもらうということもなされます。

 

被相続人のご自宅等を捜索し、お墓のあるお寺さん等の資料を探します。

 

資料が見つかったら、そのお寺さん等に連絡を取ります。

 

そこで、墓じまいができるか、永代供養はできるか等の相談をし、できる場合には費用等も聞きます。

 

あまりに費用が高い場合、裁判所の許可がおりなかったり、そもそも相続財産からでは賄えなかったりするので注意が必要です。

 

具体的な段取りが決まりましたら、見積書等をもらい、事情説明と合わせて、裁判所に対して、費用支出のための権限外行為許可審判申立てをするという流れになります。

相続財産管理人日誌19

毎度本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は、相続財産管理人の業務についての19回目の記事となります。

 

今回と次回に渡り、祭祀財産等についてお話しします。

 

相続財産管理人選任申立ての要件の一つに、相続人が不在であると考えられる場合というものがあります。

 

相続人が不在というのは、大まかに、法定相続人になり得る人がいないか、法定相続人がいたが全員相続放棄をした、という場合です。

 

法定相続人がいたケースにおいては、葬儀を済ませ、ご遺骨はお墓に安置されていることが多いです。

 

法定相続人がなり得る人がいないケースにおいては、孤独死などのことが多く、市町村等がご遺体の処理をされていることがあります。

 

このような場合、まずご遺骨の所在を確認しておく必要があります。

 

ご遺骨などの祭祀財産は、厳密には相続財産ではありません。

 

しかし、現実的には放置するわけにはいきませんので、相続財産管理人が最終的な措置をすることが多いです。

 

ご遺骨の所在が判明したら、預かっている人に連絡を取り、一旦引き取ることになります。

 

また、被相続人のご自宅に、ご先祖様やご親族様のお仏壇やご位牌があることもあります。

 

これらについても、ただちに無価値な動産として処分するわけにはいきませんので、措置を考える必要があります。

 

次回は、祭祀財産の処理について、説明します。

相続財産管理人日誌18

今回もブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士の鳥光です。

 

相続財産管理人日誌第18回目は、不動産の境界確認についてです。

 

被相続人が土地を有していた場合、最終的には売却換価するか、どうしても買い手がつかない場合には国庫に納めるという形になります。

 

そして、債務超過ケースでなく、特別縁故者が存在する可能性が考えられる場合には、売却換価等の処分をするまで、相続財産管理人選任時から1年以上の期間を要することもあります。

 

その間、被相続人の土地と隣接する土地にも動きが生じることがあります。

 

具体的には、隣接する土地が売買されることがあり、その際に境界確認の依頼がなされることがあります。

 

具体的には、隣接する土地の関係者が土地家屋調査士に境界調査と確定を依頼し、その土地家屋調査士から相続財産管理人に対して、境界確認の依頼がなされます。

 

基本的には、スケジュール調整をして、現地に立ち会って境界の位置を確認します。

 

境界確認は、相続財産管理人側にもメリットがあります。 

 

将来的に、被相続人の土地を売却する場合には、境界確認に関する資料が必要になります。

 

被相続人の不動産が古いものである場合、家屋内等を捜索しても、境界確認書を発見できないことがあります。

 

売却前に調査することもありますが、時間も手間もかかります。

 

そこで、前もって隣地側の負担で境界確認をし、境界確認書を取得しておくことで、被相続人の土地の売却が円滑に進められます。

相続財産管理人日誌17

今回は、相続財産管理人日誌、第17回目となります。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の活動を記していきます。

 

相続財産管理人に選任されると、裁判所より、相続財産管理人選任官報公告がなされます。

 

相続人や受遺者がいる場合、これを見て相続財産管理人に連絡をするということがあります。

 

一方、相続財産管理人側でも、受遺者(遺言によって財産を遺贈された人)がいないか、確認をしま

す。

 

なお、法定相続人に関しましては、相続財産管理人選任申立ての際、戸籍上の相続人がすべて不在であること、または相続人になり得る人がすべて相続放棄済であることを、資料を以て疎明されていますので、よほどのことがない限り、別に存在するということはありません。

 

受遺者は、通常、自筆証書遺言か、公正証書遺言によって指定されます。

 

まず自筆証書遺言については、基本的には自宅を捜索する以外の方法はありません。

 

もし他の人が持っている場合には、官報を見て名乗り出てくれることを待つしかありません。

 

公正証書遺言の場合、あまり古いものでなければ、公証役場にて検索が可能です。

 

まず、行きやすい公証役場に連絡をし、予約を取ります。

 

そして、相続財産管理人選任審判書、自身の身分証明書を用意し、公証役場で手続きをすれば公正証書遺言の検索ができます。

 

なお、公正証書遺言の検索は無料で行うことができます。

相続財産管理人日誌16

本日も本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人弁護士としての活動につきまして、第16回目のお題は、近隣の方とのコミュニケーションです。

 

相続財産管理人選任の申立てをした人が元相続人や親類の人である場合は、被相続人に関する情報を多く得られることが多いです。

 

逆に、申立人が元相続人や親類でない場合は、被相続人に関する情報があまり得られません。

 
具体的には、被相続人の債権者や、空き屋管理のために市町村等が相続財産管理人選任の申立てをした場合です。

 

そのような場合は、自宅訪問の際、近隣の住人の方へヒアリングをすることがあります。

 

私は、実際にこれを行ったことで、被相続人が自動車を保有していたことや、その所在地を知ることができました。

 

また、町内会長の連絡先を教えてもらえたことで、町会費の滞納があることも調査することができました。

 
そのほか、様々な資料のご提供もいただくことができたので、近隣の方との関係を良好に保つことはとても大切だと感じました。

 

近隣の方へいきなり声をかけると怖がられる可能性もありますので、相続財産管理人選任審判書のコピーや、弁護士の身分証明書等を手元に用意し、身分を明らかにしながらお話をするとスムーズにヒアリングができます。

相続財産管理人日誌15

今回は、相続財産管理人日誌、第15回目となります。

 

相続財産管理人弁護士としての、日々の体験談を記していきます。

 

相続財産の中に自宅建物がある場合、早いタイミングで捜索を行うことになります。

 

一番の目的は、相続財産に関する情報の調査です。

 

現金や通帳、株式・投資信託に関するレポート、保険証券、自動車の鍵や車検証、高価な動産(金のインゴットなど)、貸金業者との間の金銭消費貸借契約書、公共料金の請求書などを探します。

 

これらを手掛かりとして、財産目録の作成を開始します。

 

同時に、必要であれば清掃をします。

 

腐敗物がある場合は、処分が必要です。

 

私が捜索した家屋には、通電した冷蔵庫があったため、中身を処分しました。

 

また、水回り等には、殺虫剤を散布しておきます。

 

通電している場合は、万一の火災発生を防ぐため、ブレーカーを落とします。

 

電気をつけた方が捜索は楽ですが、ホコリ等に火が付くと非常に危険であるため、安全を優先します。

 

家屋を捜索する際、私は次の装備を持っていきます。

 

・ヘッドライト
・マスク
・軍手
・長袖長ズボン
・殺虫剤
・ゴミ袋
・貴重品を入れるための頑丈なビニールバッグ
・カメラ(スマホについているもの)
・ポケッタブルのバッグパック

 

基本的に、相続財産の家屋の中は暗いです。
ライトがないと捜索ができません。

 

ホコリが舞っていたり、カビが発生していることもあるため、マスクも必要です。

 

汚損している物や、危険物もあるため、軍手も必須です。

 

ケガや害虫被害を防ぐため、夏場でも長袖長ズボンを着用します。

 

殺虫剤も、訪れるたびにまいておいた方が良いです。
私は、購入した殺虫剤を、相続財産の家屋に置いています。

 

腐敗物等を廃棄するため、ゴミ袋を用意します。

 

通帳や現金、重要な書類など、汚損滅失を防ぐ必要がある物を持ち帰るため、頑丈なビニールバッグも用意します。

 

家財道具の情報を後で整理するためにも、家屋内部の様子をカメラで撮ります。
修繕が必要と考えられる破損個所がある場合は、その様子も撮っておけば、裁判所と相談する際にも役立ちます。

 

相続財産に関する資料は、想定以上に多くなることもありますので、折りたためるバッグパックも持っていきます。

相続財産管理人日誌14

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人弁護士としての活動日誌、第14回目は、裁判所との連絡についてです。

 

相続財産管理人に選任されると、通常選任の日から2か月後に、相続財産目録を作成し、被相続人の財産状況を報告しなければなりません。

 

もっとも、裁判所から示された指示に基づく報告のほかにも、随時連絡を取り合います。

 

特に選任されてすぐの時期は、急速に被相続人に関する情報が集まりますので、不明点が出た時には、即時に確認をする必要があります。

 

相続財産管理人が扱う財産は、すでにお亡くなりになっている方の財産であるため、事情がわからないものも多くあります。

 

そのため、扱いに迷う場合には、裁判所へ連絡し、処理について判断を仰ぐことも行います。

 

例えば、先日の記事でも紹介した、自宅の鍵の開扉、交換があります。

 

財産状況の調査や、不法侵入の防止のためという観点からは、保存行為と考えられ、権限外行為の許可審判を受ける必要はないとも考えられます。

 

他方、玄関の鍵という自宅建物の一部を破壊することを伴いますので、その意味では保存行為を超えているおそれもあります。

 

このような場合、裁判所へ確認し、権限外行為の許可の要否を尋ねます。

 

私のケースでは、保存行為となりました。

そのほか、被相続人の税金に関する通知が市役所等から届いた場合も、注意が必要です。

 

税金は課税時期が決まっておりますので、その時期によって相続債務なのか、相続開始後に発生した債務なのかが変わってきます。

 

相続債務は原則として、相続債権者に対する請求公告期間終了後に弁済(財産が少ない場合は配当)することになりますが、相続開始後の債務は、請求公告期間終了前でも、相続財産から支払います。

相続財産管理人日誌13

相続財産管理人日誌、第13回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を記していきます。

 

相続財産の中に自宅不動産が含まれ、かつ庭が存在する場合には、庭に入る門の施錠が必要になることがあります。

庭に第三者が入り込む可能性があるためです。

 

第三者といっても様々な方がいます。

不法に占有する人や、ごみ等を不法投棄する人が典型ですが、それ以外にもあり得ます。

 

都心ではあまりありませんが、地域のコミュニティのつながりが強い地域などでは、害意なく庭に入り込む方もいらっしゃいます。

中には、ご厚意で庭の掃除をしてくださっている方などもいらっしゃいます。

 

もちろん、それ自体は事実上は問題はありません。

もっとも、何か起きてしまっては、管理責任上の不備があったということにもなりかねません。

 

そこで、庭の門にも、当該不動産が相続財産管理人の管理下に置かれたため関係者以外の立入りをご遠慮いただく旨を記した看板などを設置するとともに、チェーンロック等で施錠をしておくのが得策です。
(補足しますと、管理者の承諾なく入ることは、建造物侵入罪に該当する可能性もあります)

相続財産管理人日誌12

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

相続財産管理人日誌第12回目は、自宅建物の鍵についてです。

 

申立人から提供してもらえるなど、自宅の鍵が入手できる場合には、これを用いて自宅建物に出入りします。
合鍵が存在しているか否かについても、確認が必要です。
許可していない人が侵入することは防ぐ必要があるためです。

 

問題となるのは、自宅の鍵が存在していないケースです。
もともと相続人がいない方が、外出中などにお亡くなりになると、警察が捜査したうえで、市役所などがご遺体を処理し、遺留品を保管します。
相続人がいない場合、一定期間経過すると遺留品が処分されます。
このようにして、自宅の鍵が滅失することがあります。

 

私が管理した家屋にも、このケースがありました。
自宅建物に入れないと、相続財産管理人としての業務遂行は極めて困難なので、鍵の開扉及び鍵交換(自宅内部に鍵がない場合)をする必要があります。
鍵の開扉と鍵交換は、保存行為とされるため、権限外行為の許可を得る必要はないとされますが、私は念のため裁判所へ確認もしました。
家屋の一部破壊を伴うためです。

 

鍵の開扉と交換は、専門の業者の方へ依頼するのが一般的です。
まずは開扉だけを行ってもらい、玄関を開けたら家の中を捜索します。
自宅の鍵が見つかれば、鍵交換が不要となることが多いためです。
(合鍵を持っている人が存在する可能性があるという観点からは、鍵を交換してしまった方が安全であるという考えもあります。)

 

鍵の開扉と交換は、それなりに費用がかかりますので、被相続人の預金解約が済んでいない場合は、一時的に立て替えたうえで、後日被相続人の預金をもって清算する流れになります。

 

私が鍵開扉、交換に立ち会ったのは真夏であったため、蚊に刺されるのを防ぐため、業者の方と一緒に虫よけスプレーをまいていました。
そうしたところ、玄関近くの物陰に蜂の巣が隠れており、虫よけスプレーに刺激されて20匹くらいの蜂が一気に出てきたことがあります。
非常に危険なので、被相続人の自宅不動産を訪れる場合には、害虫の有無の確認はとても重要です。

相続財産管理人日誌11

相続財産管理人日誌、第11回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を記していきます。

 

今回は、被相続人が有していた自宅不動産の取り扱いです。

 

なお、相続財産管理人の選任申立てがなされる場合、被相続人は不動産を有していることが多いです(そもそも、不動産の清算のために申し立てられることが多いためです)。

 

まずは、自宅不動産について、現地調査を行います。

 
ここでは一軒家を想定します。

 
外側から観察できる事項だけでも、少なくとも次のことを調べます。

 

・雑草や樹木が多い茂っていないか、隣家や道路にはみ出していないか
・占有者がいないか
・害虫がいないか(蜂の巣の有無など)
・家屋が傷んでいないか(倒壊の危険性、屋根や壁の穴の有無など)

 

相続財産管理人になると、原則として1年以上相続財産を管理することになりますので、近隣の方への影響も考える必要があります。

 

雑草や樹木がはみ出している場合は剪定をする必要がありますし、害虫がいる場合は駆除する必要もあります。

 
家屋に倒壊の危険性がある場合、売却までの間、最低限の補修をしておく必要があります。

 

私が管理した家屋には、蜂の巣ができておりました。

 
自宅の鍵がなかったため、鍵交換作業中に蜂の巣があることが発覚し、刺激しないように慎重に鍵交換作業を行った経験があります。

 
その後すぐに申立人と相談したところ、駆除してもらうことができましたが、場合によっては相続財産管理人が害虫駆除業者等を手配して駆除することも考えられます。

 

自宅建物の内部に入ったら、まずは次のことを行います。

 

・老朽化状況の確認(特に床板が腐っていないか)
・腐敗物、害虫の存在の有無の確認
・電気、ガス、水道が止まっているか否かの確認
・間取りの確認
・施錠状況の確認
・相続財産に関わる資料の捜索

 

古い家の場合、床板が老朽化していることがあります。

 
歩行中に床が抜けてしまうと大怪我をする可能性がありますので、場合によっては補強が必要になります。

 
そうでなくても、床に何が落ちているかわからないため、安全靴やワークブーツなど、頑丈な靴を用意していった方が無難です。

 

腐敗物がある場合、臭いがひどいと管理作業に悪影響があります。

 
また、害虫が発生します。

 
これらは早急に処分します。

 
私が管理した家屋には、通電している冷蔵庫が存在していたことがありましたので、中身を処分し、ブレーカーを落としたうえで、冷蔵庫の周りに殺虫剤をまきました。

 

間取りを確認すると同時に、部屋の写真を撮っておきます。

 
これは、後で家財道具を処分する際の目録を作成するために役立ちます。

 

玄関以外の窓、勝手口等について、施錠されているかを確認します。

 
空き家は空き巣の被害に遭うことが多いためです。

 
窓ガラスの場合、雨戸があれば雨戸も閉じておくとガラスを割って侵入されるリスクを低減できます。

 

これらのことを行ったうえで、現金、預金通帳や請求書など、相続財産に関わる資料の捜索を行います。

相続財産管理人日誌10

本日も、本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人日誌第10回目となる今回は、預貯金以外の金融資産についてです。

 

被相続人の預貯金を解約し、相続財産管理人口座へ移行することと、被相続人の株式や投資信託の売却換価・保険の解約返戻金等を受け取ることは、一見似ています。

 

しかし、相続財産管理人業務としては大きな違いがあります。

 

預貯金の解約は、相続財産管理人の権限内の行為であるので、裁判所の許可が必要ありません。

 

一方で、株式や投資信託の売却、保険の解約返戻金等の受け取りは、権限外行為となりますので、裁判所に申立てをしたうえで、許可を得る必要があります。

 

証券会社や保険会社も、権限外行為許可審判書の提示を求めてきますので、失念する可能性は高くないとは思いますが、預貯金の解約に比べてプロセスが増えることに注意が必要です。

 

株式や投資信託の売却金を受け取るにあたり、証券会社に口座を作らなければならないことがあります。

 

この口座に一度入金され、その後で相続財産管理人口座へ送金するという流れになります。

 

また、保険の解約をし、解約返戻金等を受け取る場合は、保険会社によっては死亡診断書のコピーの提示を求めてきます。

 

申立人がこれを提供できる場合は良いのですが、そうでない場合は非常に厄介です。

 

死亡診断書を作成した病院が分かる場合は、その病院にコピーの提供をお願いするということもあります。

 

しかし、その病院すらわからない場合、被相続人の最後の本籍地を管轄する法務局に対し、死亡届記載事項証明書というものの発行を受けるほかありません。

 

この死亡届記載事項証明書は、申請すれば発行を受けられるというものではなく、民間の保険を受け取る目的では、原則として発行してもらえません。

 

そのため、裁判所に状況を説明して上申したうえで、事務連絡というものを発行してもらい、これを法務局に示すという手続きが必要です。

 

法務局としても極めて例外的な手続きになりますので、これでも死亡届記載事項証明書が発行できないという場合、裁判所からの嘱託によって発行するということもあり得ます。

相続財産管理人日誌9

相続財産管理人日誌、第9回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての日々の体験談を、秘密の漏洩にならない範囲で紹介していきます。

 

相続財産管理人口座を作成し、被相続人の預貯金の存在が判明したら、次は預貯金の解約と、相続財産管理人口座への送金を行います。

 

この手続きも非常に時間がかかるため、早めに着手した方が良いです。

 

基本的には、相続財産管理人選任審判書、相続財産管理人の身分証明書、相続財産管理人印鑑証明書と印鑑、相続財産管理人口座の情報が最低限必要になります。

 

かなり例外的な手続きとなりますので、可能な限りは、窓口で金融機関の担当者の指示を仰ぎながら書類等を書く方が得策です。

 

多くの金融機関は、相続財産管理人の代理人でも手続きを認めてくれます。

 

その場合の書類(委任状)についても、事前に記載事項を確認しておくとよいです。

 

ゆうちょ銀行に被相続人の預金がある場合、解約後の送金は、同じゆうちょ銀行の口座にしかできません。

 

相続財産管理人口座がゆうちょ銀行以外である場合は、次の2つの方法で預金を移動します。

 

ひとつは、一旦証券をもらい、現金化したうえで、相続財産管理人口座へ預け入れをするというものです。

 

被相続人の預金が多額である場合、一時的に多額の現金を持ち歩かなければならないため、精神的な負担は大きいですし、実際に危険性もあります。

 

もうひとつは、ゆうちょ銀行にも口座を作る方法です。

 

お金の流れがわからなくなってしまうと危険ですので、ゆうちょ銀行においても相続財産管理人名義の口座を作り、一度この口座に被相続人の預金を移した後で、元々有している相続財産管理人口座へ送金するとよいです。

相続財産管理人日誌8

本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

相続財産管理人日誌第8回目は、預貯金等の金融資産の調査についてです。

 

相続財産管理人選任申立書には、財産目録という添付書類があります。

 
そして、財産目録に記載された財産を疎明する資料(預金通帳の写しや、株式・投資信託のレポートなど)も添付されます。

 

申立人が被相続人の財産について詳しく調査している場合は、財産目録によって、網羅的に大方の相続財産を把握することができます。

 

一方、諸事情により、申立人が被相続人の財産の情報をあまり入手できない場合もあります。

 
被相続人の自宅の鍵がない場合や、債権者等の利害関係者が申立人となる場合です。

 

このときは、金融資産の情報がほとんどない状態で申立がなされます。

 

このような場合、相続財産管理人は、ゼロから金融資産の情報を調査しなければなりません。

 

具体的には、次のステップを踏んで調べます。

 

1 被相続人の所持品、家屋の調査
被相続人が所有していた物を調べます。

 
遺留品を預かっている人がいれば、その人から遺留品を受け取ります。

 
また、基本的には、被相続人の自宅を訪問し、捜索を行います。

 
具体的には、預金通帳や、証券会社のレポート、保険証券・保険レポート等を探します。

 
(なお、預金通帳など重要な物については、相続人のいない被相続人が孤独死などをされていると、警察から市役所等に預けられ、相続人不在として処分されていることもあります)

 
これらにより、被相続人が資産をを有していたであろう金融機関が判明しますので、当該金融機関に対して、しらみつぶしに照会を行うという手順になります。

 

2 預金通帳等が一切見つからない場合
遺留品や自宅を捜索しても、預金通帳等が見つからない場合は、とても大変です。

 
一般的に、銀行口座を一つも持っていないという人は非常に稀です。

 
そのため、一応の調査を行う必要があります。

 
この場合は、まずゆうちょ銀行とメガバンクから照会をかけます。

 
お歳を召していた方であれば、ゆうちょ銀行に口座を持っていることは多いです。

 
また、被相続人が地方にお住いであった場合、自宅近くにある地銀や農協、信用金庫も当たってみるとよいです。

相続財産管理人日誌7

今回は相続財産管理人日誌、第7回目です。

 

相続財産管理人弁護士としての体験談を紹介していきます。

 

前回、相続財産管理人用の口座開設の際に必要となる具体的な資料等について述べました。

 

今回は、口座開設の際に一緒に行ってしまうとよい手続きについて説明します。

 

相続財産管理人に選任された際、不動産登記や相続財産管理人口座開設と並行して、相続財産の調査を行います。

 
これは、相続財産管理人の業務の一つとして、相続財産目録を作成の上、裁判所へ提出する必要があるためです。

 
相続財産目録の提出時期は、通常、相続財産管理人選任の日から2か月後です。

 
相続財産調査には時間がかかることもあるので、かなり急ぐ必要があります。

 
なお、2か月では調査を終えられない事情がある場合、その旨を裁判所へ説明し、一旦は審判から2か月後の時点で判明している財産の報告をします。

 

申立人提供資料により、金融資産の具体的な情報が揃っている場合には、金融機関を訪れた際、その時点における残高を教えてもらうと、すぐに財産目録へ反映することができます。

 

申立人が元相続人や親族以外の者である場合など、申立人の金融資産に関する情報がない場合は、一旦、口座開設窓口において、被相続人の口座が存在していないか、質問してみます(銀行側から教えてくれることもあります)。

 
メガバンクなどの場合、被相続人が口座を持っていることも多いです。

 
その際、口座番号、支店名、残高を教えてもらうと、財産目録を早めに作ることができます。

 
私は、相続財産管理人口座開設をした銀行に、たまたま被相続人の口座があることが判明し、残高もそれなりにあることがわかったため、その後の管理費用の見通しを早期に立てることができました。

相続財産管理人日誌6

今回も本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

相続財産管理人弁護士の日誌、第6回目です。

 

前回、相続財産管理人に選任された後、相続財産管理人用の銀行口座を作成するというお話をしました。

 

その際に、通常金融機関から求められる資料につき、次の通り説明します。

 

1 相続財産管理人選任審判書原本
被相続人が死亡したこと、被相続人に相続人がいないこと、自身が裁判所から相続財産管理人として選任されたことを金融機関に示すために必要です。

 
相続財産管理人口座作成の際の書類に記載する住所や名称も、通常は審判書に書かれた通りにします。

 
なお、金融機関によっては、戸籍謄本類の提出を求めてくることがあります。

 
しかし、本来的には提出の必要はないと考えられます。

 
理由は、相続財産管理人選任申立ての段階で、すでに被相続人に関するすべての戸籍謄本類が裁判所に提出され、裁判所が審査をしたうえで、相続人が不在であることが確認されているためです。

 
そして、このプロセスを経なければ相続財産管理人の審判書は発行されませんので、審判書を以て、戸籍謄本類のチェックは不要であると説明がつきます。

 
もしも、それでも金融機関が応じない場合は、裁判所へ相談します。

 
それでも難しい場合、申立人から戸籍謄本類の写しが提供してもらえればそれで対応し、提供してもらえない場合の最終手段として、改めて戸籍謄本類を収集します。

 

2 身分証明書(弁護士会発行のカードのほか、運転免許証などが求められることもあります)
自身が、審判書に記載された相続財産管理人と相違ないことを証明するために用います。

 
通常、顔写真付きの身分証明書を用います。

 

3 裁判所が発行する印鑑証明書
家庭裁判所に申請することで、相続財産管理人用の印鑑証明書を発行してくれます。職印でも登録できます。

 

4 印鑑証明書に登録した印鑑

金融機関によって、当日口座が開設されて通帳等が発行されるところと、後日口座を開設し通帳を引き渡すところがあります。

 
スケジュール繰りには注意が必要です。

【相続放棄シリーズ】28 相続財産管理人選任申立

弁護士法人心の鳥光でございます。

 

相続放棄シリーズ28回目は、相続財産管理人選任申立てについてです。

 

正確には、相続放棄とは別個の手続きですが、相続放棄後の相続財産の処理のために必要となる場合もあるので、ここで紹介させていただきます。

 

 

1 相続財産管理人
一言でいうと、相続財産管理人は、相続人が不在となった相続財産を清算する役割を持つ人です。

 

被相続人の財産は、相続人がそもそもいないか、または相続人全員が相続放棄をすると、法概念上、相続財産法人という法人になります。

 

相続財産管理人は、この法人の代表者に位置づけられます。

 

そして、被相続人の財産、たとえば預貯金であれば管理口座に移して管理し、不動産であれば汚損や倒壊等を防ぐ等の管理をします。

 

また、裁判所の許可を得て、必要に応じて財産を換価したり、処分したりします。

 

相続人、受遺者、特別縁故者が現れなかった場合、最終的には相続財産を国庫に納めます。

 

 

2 相続財産管理人が選任されるケース
大まかに3つのパターンがあります。

1つめは、元相続人が相続財産の管理に困っているケースです。

 

特に、古い建物が存在する場合です。

 

建物は人が使っていないと、急速に老朽化します。

 

時が経つにつれ、倒壊の危険が高まったり、不法占拠者が現れるなど、トラブルの発生率が上がります。

 

このようになってしまうと、元相続人に対して、何らかの責任追及がされる可能性もあります(あるいは、法的責任はないにせよ、近隣住民や市役所等から、事実上いろいろな要求がされ、対応に困ることもあります)。

 

そこで、相続財産管理人に相続財産の管理責任を委ね、処分をしてもらうという選択をすることがあります。

 

2つめは、債権者が債権回収をするケースです。

 

被相続人に借金がある場合、相続人が返済を免れるために相続放棄をすることがあります。

 

その結果、債権者は相続人に対して支払いを求めることができなくなるため、相続財産の中にめぼしい財産がある場合には、これを換価して弁済を受けるという選択を取ることがあります。

 

この場合、債権者が利害関係人として相続財産管理人選任申立てをします。

 

3つめは、市町村等が空き家管理のために申し立てるというケースです。

 

近年、被相続人の家屋が放置され、地域の安全が脅かされたり、土地の有効活用ができなくなるという問題が増えています。

 

空き家の中には、相続人が元々不在のものや、相続人全員が相続放棄をしたものもあります。

 

このような空き家について、市町村等が利害関係人として相続財産管理人選任申立てをし、空き家の処分をするという形になります。

 

 

3 相続財産管理人選任申立ての手続き
家庭裁判所に対し、相続財産管理人選任申立書と、付属資料を提出します。

 

付属書類の中には、財産目録がありますので、可能な限り正確に被相続人の財産を調査して、疎明資料とともに提出します。

 

また、相続人全員が相続放棄をしたことで相続人不在となった場合には、相続放棄申述受理通知書の写しや、相続放棄照会結果の写し等を添付します。

相続財産管理人日誌5

今回は相続財産管理人日誌、第5回目です。

 

相続財産管理人弁護士として体験したことを、秘密の漏洩にならない範囲で紹介していきます。

 

 

相続財産管理人は、選任されたらできるだけ早く、相続財産管理人用の銀行口座を作成します。

 

これは、被相続人名義の預金を移行して管理したり、不動産等を売却した際の売却金を保管する目的で作成します。

 

名義は通常「亡(被相続人の名前)相続財産管理人(管理人の名前)」として作成します。

 

この口座で被相続人に関する金銭を一元管理します。

 

相続財産の管理に必要な金銭を、この口座から引き出して使用することもできます(場合によっては裁判所の許可が要ります)。

 

逆に、仮に自分の事業用の口座や、個人の口座を使用してしまうと、お金の出入りが複雑になり、管理できなくなる可能性があります。

 

場合によっては横領にもなりかねないので、確実に相続財産管理人専用の口座を作成し、一元管理する必要があります。

 

相続財産管理人口座の開設は、金融機関の方から見ると、かなり特殊な手続きです。

 

感覚的には破産管財人口座よりも少ないと思いますので、もはやイレギュラー対応の領域になってくるとも思えます。

 

これに加え、コロナウィルスの影響により、窓口が予約制になっていたりなど、相続財産管理人口座開設にはとても時間を要する可能性がありますので、早めに手続きに着手した方が良いです。

相続財産管理人日誌4

今日もブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 

弁護士の鳥光でございます。

 

今回は相続財産管理人日誌第4回目となります。

 

 

相続財産管理人が選任されると、裁判所から、相続財産管理人が選任された旨の官報公告がなされます。

 

これによって、被相続人の相続財産について、相続財産管理人が就いたことが、世間一般の方が知ることができるようになります。

 

ところで、相続財産管理人に選任されると、不動産業者の方からお声がかかるようになります。 

 

理由は次の通りです。

 

相続財産管理人の最終目的は、相続財産の清算です。

 

特に、不動産は、売却換価することになります。

 

相続債務が存在し、預貯金等で返済ができない場合は、不動産を売却した金銭でもって弁済を行います。

 

不動産業者の方としては、この売却換価処分について、仲介を行うことにメリットがあります。

 

不動産の売買において、媒介をすることで、手数料が発生します。

 

媒介をするためには、買い手を探したり、境界問題の有無や法令上の制限を調査したり、売買契約書を作ったり、重要事項説明書の作成及び面前での説明をしたりなど、とても多くのことを行わなければなりません。

 

売主や買主の代わりにこれらをやってもらうのですから、正当な対価としての手数料を受け取ることができます。

 

相続財産管理人は、相続人または特別縁故者が現れた場合及び不動産に買い手がつかなかった場合を除き、通常であれば相続財産に含まれる不動産を確実に売却します。

 

そのため、不動産業者の方から見れば、Win-Winの関係になれます。

 

相続財産管理人の業務を行う弁護士としては、普段から相談しやすい不動産業者の方がいると、とても心強いところです。

相続財産管理人日誌3

本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

相続財産管理人日誌の、第3回目です。

 

 

相続財産管理人に選任されると、初期の段階で申立人との面談を行うことが多いです。

 

申立人本人が申立てをしている場合は、(当然ですが)申立人とお話をします。

 

申立人に代理人がいる場合、代理人と一緒にお話をするということもあります。

 

私が相続財産管理人選任申立ての代理人をしたときは、申立人本人と一緒に相続財産管理人のもとを訪れてお話をしました。

 

コロナウィルスのこともあるので、zoomなどのリモート会議システムを使って面談をするというケースも増えているようです。

 

被相続人の財産に関する資料があれば、面談の際に申立人から相続財産管理人へ引き渡すことも多いです。

 

主なものとしては、自宅・自動車の鍵や、預貯金通帳、現金などがあります。

 

これらを引き渡してもらえると、鍵の開錠作業や、金融機関に対する預貯金照会をせずに済むことがあり、相続財産管理人としてはとても助かります。

 

面談後、自宅土地建物がある場合で、申立人が当該土地建物に詳しい(申立人が被相続人の子であり、同居していた時期があるなど)ときは、申立人と一緒に自宅土地建物へ行くこともあります。