区分所有建物と財産管理4

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回からは、相続財産清算人が管理する財産に、区分所有建物が含まれている場合についてのお話を記していきます。

 

区分所有建物に限ったことではありませんが、まずは、不動産の現地調査を行います。

 

私が経験したケースにおいては、管理対象の区分所有建物は、家族用の規模のマンションでした。

 

マンションの入り口に管理人室があり、管理人の方がいらっしゃったので、居住者の方(管理組合の組合員)がお亡くなりなられたこと、相続人不存在であったため自分が選任されたことなどを説明しました。

 

管理人の方は、管理組合から委託を受けている管理会社の担当者でした。
こちらの身分と連絡先を伝えるとともに、管理会社の担当者の方の連絡先等もうかがっておきます。

 

今後の区分所有建物の管理や売却の手続きなどの際、管理会社に連絡をすることも多いので、できるだけ早めに関係を築いておくとよいです。

 

例えば、かなり細かいことですが、管理費や修繕積立金の支払方法の調整が挙げられます。
私が管理したマンションにおいては、管理費や修繕積立金は被相続人の口座から引き落とされていました。

 
財産管理のため、被相続人の口座は解約し、預金は管理口座に移しますので、管理費と修繕積立金の支払方法も変える必要がありました。
管理会社と相談をしたところ、本来は引き落としのみとのことでしたが、銀行が指定されているとのことでしたので、請求書方式に代えてもらうことができました。

区分所有建物と財産管理3

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前回、空き家を法律的に管理する方法について述べました。

 

所有者不明となっている区分所有建物と、管理不全となっている区分所有建物の管理については、現状として、これらの特化した財産管理制度はありません。

 

区分所有建物ではない戸建ての空き家においては、令和5年4月に施行された、所有者不明土地・建物管理制度、管理不全土地・建物管理制度による管理が可能です。

 
しかし、これらの制度は、区分所有建物には適用されません。

 

この状態を踏まえ、2024年2月15日の法制審議会における区分所有法の改正要綱が採択されたことから、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度が成立する可能性があります。

 

所有者不明となっている区分所有建物の管理については、共用部分の扱いや、建て替え決議における議決権行使などの点において、民法の所有者不明建物管理制度とは異なります。

管理不全となっている区分所有建物の管理については、さらに管理不全専有部分と、管理不全共有部分の管理制度があります。

管理不全専有部分の管理制度は、専有部分内の残置物・廃棄物、腐食した配管の管理などが想定されています。

管理不全共有持分の管理制度は、共有部分である外壁が損傷している場合や、廊下などにゴミがたくさん置かれている場合の対応を想定しています。

区分所有建物と財産管理2

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、共同住宅の空き家を管理する手段についてです。

 

共同住宅という言葉の意味は広いため、ここからは区分所有建物という言葉を用います。

 

区分所有建物とは、区分所有法第1条によれば「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるとき」の「各部分」のことです。

 

一般的なイメージとしては、分譲マンションにおけるマンションの1室です。

 

財産管理の観点から、空き家となっている区分所有建物を、次の3つに分けてみます。

 

①相続人不存在となっている区分所有建物
②所有者不明となっている区分所有建物
③管理不全となっている区分所有建物

 

①は、持ち主が亡くなり、相続人の存在が判明しないものです。
法的に所有者がいない状態となります。
元々相続人がいなかったという場合と、相続人がいたものの全ての相続人が相続放棄をした場合があります。
この状態になっている空き家は、相続財産清算人による管理、処分をすることになります。
管理、処分の対象は、空き家以外のすべての相続財産に及びます。

 

②は、法的には所有者がいるものの、行方がわからずまったく連絡をとることもできないものです。
これについては、現在の法律上は不在者財産管理人による管理、処分での対応が見込まれます。
ただし、相続財産清算人の場合と同様に、不在者のすべての財産を対象とする必要があります。

 

③は、所有者がいるにもかかわらず、適切な管理が行われていないものです。
ゴミ屋敷状態になっているものや、放置されて荒れ放題になってしまっているものなど、他の住民等に被害が及ぶ(またはその可能性がある)空き家が挙げられます。
このような空き家への対応は、現行法上は所有権に基づく妨害排除・予防請求権の行使や、共同利益は違反行為に対する措置が考えられます。
しかし、いずれも、管理不全となっている空き家を直接管理することはできません。

区分所有建物と財産管理1

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今回からは、区分所有建物と財産管理についてのお話を書いていきます。

 

昨年から今年にかけて、相続人不存在となったマンション(区分所有建物)の管理・清算をしました。
先日、相続財産清算人としての手続きをすべて終え、財産を国庫に納めたところです。

 

相続財産清算人(旧:相続財産清算人)として区分所有建物を扱ったのは、初めてでした。

 

これまでに行った相続財産清算人の業務は、自治体が居住用の土地の有効活用を目的とした空き家対策や、隣接地に生じた危険を排除するために申し立てられたものでした。
そのため、管理、清算の対象はベッドタウンの一軒家でした。

 

しかし、実際には、マンションなどの共同住宅の方が空き家が多いのです。
総務省の発表によれば、2023年10月時点において、全国に899万5200戸ある空き家のうち、マンションやアパートが502万3500戸を占めています。

 

参考リンク:e-Stat(政府統計の総合窓口)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004015763

 

特に、都市部の方が、共同住宅の空き家の割合が高い傾向にあるように見受けられます。
東京都においては、空き家の総数は96万7800戸であるところ、そのうち共同住宅の空き家は84万700戸となっています。

 

もちろん、共同住宅の空き家すべてが所有者不存在、所有者不明、管理不全に陥っているわけではありません。
それでも、居住者の高齢化が進むにつれ、このような状態になってしまう共同住宅も増えていってしまうと考えられます。

 

次の記事では、現時点での空き家管理手段についてお話しします。