弁護士法人心の鳥光でございます。
相続放棄シリーズ28回目は、相続財産管理人選任申立てについてです。
正確には、相続放棄とは別個の手続きですが、相続放棄後の相続財産の処理のために必要となる場合もあるので、ここで紹介させていただきます。
1 相続財産管理人
一言でいうと、相続財産管理人は、相続人が不在となった相続財産を清算する役割を持つ人です。
被相続人の財産は、相続人がそもそもいないか、または相続人全員が相続放棄をすると、法概念上、相続財産法人という法人になります。
相続財産管理人は、この法人の代表者に位置づけられます。
そして、被相続人の財産、たとえば預貯金であれば管理口座に移して管理し、不動産であれば汚損や倒壊等を防ぐ等の管理をします。
また、裁判所の許可を得て、必要に応じて財産を換価したり、処分したりします。
相続人、受遺者、特別縁故者が現れなかった場合、最終的には相続財産を国庫に納めます。
2 相続財産管理人が選任されるケース
大まかに3つのパターンがあります。
1つめは、元相続人が相続財産の管理に困っているケースです。
特に、古い建物が存在する場合です。
建物は人が使っていないと、急速に老朽化します。
時が経つにつれ、倒壊の危険が高まったり、不法占拠者が現れるなど、トラブルの発生率が上がります。
このようになってしまうと、元相続人に対して、何らかの責任追及がされる可能性もあります(あるいは、法的責任はないにせよ、近隣住民や市役所等から、事実上いろいろな要求がされ、対応に困ることもあります)。
そこで、相続財産管理人に相続財産の管理責任を委ね、処分をしてもらうという選択をすることがあります。
2つめは、債権者が債権回収をするケースです。
被相続人に借金がある場合、相続人が返済を免れるために相続放棄をすることがあります。
その結果、債権者は相続人に対して支払いを求めることができなくなるため、相続財産の中にめぼしい財産がある場合には、これを換価して弁済を受けるという選択を取ることがあります。
この場合、債権者が利害関係人として相続財産管理人選任申立てをします。
3つめは、市町村等が空き家管理のために申し立てるというケースです。
近年、被相続人の家屋が放置され、地域の安全が脅かされたり、土地の有効活用ができなくなるという問題が増えています。
空き家の中には、相続人が元々不在のものや、相続人全員が相続放棄をしたものもあります。
このような空き家について、市町村等が利害関係人として相続財産管理人選任申立てをし、空き家の処分をするという形になります。
3 相続財産管理人選任申立ての手続き
家庭裁判所に対し、相続財産管理人選任申立書と、付属資料を提出します。
付属書類の中には、財産目録がありますので、可能な限り正確に被相続人の財産を調査して、疎明資料とともに提出します。
また、相続人全員が相続放棄をしたことで相続人不在となった場合には、相続放棄申述受理通知書の写しや、相続放棄照会結果の写し等を添付します。