令和3年4月になりました。
暖かい日も増え、日によっては暑いくらいかもしれません。
弁護士法人心の鳥光でございます。
相続放棄シリーズ24回目です。
今回と次回は、私が今まで相続放棄業務を行ってきた中で、相続放棄に付随して発生する問題や、これに対する対応法について記していきます。
1 相続放棄は手続そのものより付随問題対応が難しい
相続放棄の手続き自体は、例外的なケースを除き、相続放棄申述書を作成し、戸籍謄本等の添付資料と一緒に家庭裁判所へ提出することでできます。
これだけであれば、そこまで大変な手続きではありません。(子が亡くなった場合の親の相続放棄や、兄弟姉妹の相続放棄は、集める戸籍謄本類が多いため、専門家でない方が行うのは簡単ではありません)
しかし、相続放棄を希望される方は、被相続人に関する何らかの付随問題を抱えていることが多いです。
単に相続放棄申述書を裁判所に提出しただけでは解決しないことがあります。
そして、あくまでも私見ですが、専門家としても、相続放棄の手続きをするだけではなく、依頼者の方が抱えている諸問題も一緒に解決するべきであると思います。
では、相続放棄に付随する問題としてどのようなものがあるのでしょうか。
2 相続放棄に付随する問題
(1) 被相続人の負債
被相続人が貸金業者等からお金を借りていた、家賃を滞納していた、入院費を滞納していた、等があります。
原則としては、相続人が債務を相続しますので、相続人へ支払い請求がされることになります。
(2) 残置物
被相続人が賃貸物件に住んでいた場合、生前に使用していた衣類や家財道具等が残ります。
賃借権や明け渡しの義務も相続の対象となりますので、賃貸人は相続人に対して明け渡し等を求めることになります。
(3) 不動産(建物)、自動車
相続人全員が相続放棄をすると、不動産や建物は相続人不在となります。
もっとも、不動産や自動車は、物理的には残存し続け、元相続人は管理責任を負うことになります。
建物がある場合、倒壊等の危険があり、何らかの責任を問われる可能性が残ります(管理責任の内容は、明確には確立していません)。
自動車についても、他人の土地上にある場合、撤去を求めてくることがあります。
(4) 被相続人の保証人になっている
相続人が、被相続人の保証人になっている場合があります。
被相続人の借金の保証人になっている場合もあれば、被相続人が自宅の賃貸借契約をする際の保証人になっている場合もあります。
保証人になっている場合、保証契約はあくまでも債権者と相続人との間で締結されるものであるため、相続放棄をしても保証債務から免れることができません。
次回、これらについての対処法について説明します。