夏も本番になりました。
熱中症対策は十分にしなければなりません。
相続,債務整理を中心に担当しております,弁護士の鳥光と申します。
今回は相続放棄シリーズ17回目,相続放棄が(事実上)できない場合についてのお話です。
1 相続債務があるが,生活に必要な財産もある場合
典型的な例として,被相続人が消費者金融等に債務を有していると同時に,自宅を所有しており,相続人がそこに住み続ける場合がこれにあたります。
もちろん,相続放棄をして,(元)自宅から退去するという選択も,理論的には存在します。
しかし,新たな家を探すことは簡単なことではありませんし,自宅の価格に比べて債務額が低い場合,もったいない感じもします。
このような場合,相続放棄以外の解決手段がないか,検討します。
2 解決法は大きく分けて2つ
1つは,自宅を売却し,その売却金で債務を返済することです。
もっとも,この方法は,売却金の余りを得ることはできるものの,新たな住居を探して転居する負担は残ってしまいます(不動産の売却自体も簡単ではありません)。
2つめとして,任意整理,時効援用を行うという方法が考えられます。
まず,被相続人の方宛てに送られた請求書や,信用情報機関から取得した情報を元に,債権者と債務額を正確に調査します。
この時,返済期限から何年も経っていて,消滅時効が完成しているようでしたら,時効を援用することで債務をなくすことができます。
金銭債務は,相続人全員に法定相続割合で分割されているので,相続人それぞれが時効援用をする必要があります。
時効が完成していない場合,任意整理を行います。
放っておくと遅延損害金が膨れ上がるだけでなく,場合によっては訴訟を提起されたり,裁判所を通して支払督促がなされたりすることがあります。
任意整理によって和解契約を締結し,支払金額を固定したうえで分割払い等にすることが一般的ですが,この部分は通常の任意整理(ご存命の方の任意整理)と比較すると複雑になります。
上述の通り,消費者金融等に対する金銭債務は,相続人間で法定相続割合で分割されます。
そのため,和解契約は相続人それぞれが債権者に対して行う必要があり,支払いも個別に行うことが基本です。
もっとも,これは非常に手間がかかりますので,和解契約書の文面において,相続人それぞれが法定相続割合による債務を有していることを確認したうえで,相続人代表者を決めて,その人が債権者に対して全員分の支払いを行うとすることがあります。
あくまでも,代表者は債権者に対して全員分をまとめて支払うだけで,相続人全員の債務を負担するわけではありません。