東京都には緊急事態宣言がなされ,人通りもかなり減ってきました。
相続放棄の申述期限は延期されないため,相続放棄手続代理人としての仕事は平常運転となっております。
弁護士法人心で相続を担当している,鳥光でございます。
相続放棄シリーズも9回目となりました。
今回は,相続放棄の期限について,改めて考えてみます。
1 相続放棄の申述期限
相続放棄は,相続の開始があったことを知った日から3か月以内,と定められています。
相続が開始した日(=被相続人が死亡した日)から3か月以内ではありません。
これは,相続放棄手続の機会及び熟慮期間の保障のためであると考えられます。
何らかの事情で3か月以上被相続人が死亡したことを知ることができず,知った時には申述期限を過ぎてしまっていた,という事態に陥ることを防ぐということです。
2 相続の開始があったことを知った日
では,相続の開始があったことを知った,とは具体的にはどのようなことをいうのでしょうか。
以下に,典型的なものを挙げてみます。
①被相続人が死亡したことを看取った場合
被相続人が死亡した日に,死亡したことを知ったことになるので,被相続人死亡日が,相続の開始があったことを知った日になります。
②他の相続人や親族から,被相続人が死亡した旨の連絡を受けた場合
連絡を受けた日が,相続の開始があったことを知った日となります。
被相続人が遠方に住んでいて,あまり交流をしていなかった場合等は,被相続人が死亡してから数日経った後に連絡が来ることもあるので,被相続人死亡日よりも後の日付になります。
後述しますが,電話連絡があった場合でも,その日が知った日になりますが,相続放棄申述書に添付する資料があると安心ですので,日付の入った手紙やメールなどがあるとベターです。
③市役所等から書面等により被相続人が死亡した旨の連絡を受けた場合
正確には,書面等を受取って読んだ日が,相続の開始があったことを知った日になります。
もっとも,この書面の写しを相続があったことを知った日を根拠づける資料として裁判所へ提出することが多いので,書面に記載された日付を,相続の開始があったことを知った日とする対応をすることもあります。
④債権者等から書面により被相続人が死亡した旨の連絡を受けた場合
③と同様,書面を読んだ日が,相続の開始があったことを知った日となりますが,便宜上書面に記載された日付をもって,相続の開始があったことを知った日とすることがあります。
3 相続放棄は被相続人が死亡した日から3か月以内に行った方が良い
相続放棄は,理論上は,相続の開始があったことを知った日から3か月以内に行えばよいので,被相続人が死亡した日から10年後であっても,被相続人が死亡したことを知った日から3か月以内であれば行えます。
もっとも,裁判所としては,被相続人が死亡した日から3か月以上経って相続放棄の申述がなされた場合,相続の開始があったことを知った日が,被相続人死亡日より遅くなった理由を確認します。
事情を説明する文書を作成するとともに,手に入る範囲で根拠となる資料も添付しなければならない場合もあります。
審査も厳格になる可能性があり,場合によっては却下されないとも限りません。
そのため,被相続人死亡日よりも後に被相続人が死亡したことを知った場合であっても,被相続人死亡日から3か月以内に申述が可能であれば,急いででも被相続人死亡日3か月以内に相続放棄の申述書を裁判所に提出した方が安心です。