【相続放棄シリーズ】7 債権者の立場

年度の終わりも近づき,世間では新年度を迎える準備に追われている方もいらっしゃるかもしれません。

 

弁護士法人心東京駅法律事務所でも,4月から新入社員が加わります。

 

相続放棄シリーズ7回目は,債権者の立場の考察です。

 

1 債権者

債権者という言葉はとても広い意味を持ちますが,相続放棄の際の債権者とは,多くの場合被相続人に対して金銭を請求する権利(金銭債権)を有する人のことを指します。

 

銀行やクレジットカード会社,賃貸物件の賃貸人,税金の滞納がある場合には国や市町村が債権者になることが多いです。

 

2 相続放棄と債権者との関係

被相続人に対して金銭債権を有していた人は,その相続人に対して,債権額に対応する金銭を支払うよう請求できるのが原則です(複数の相続人がいる場合,各相続人には法定相続割合に対応する金銭の支払い義務が生じます)。

 

相続人が相続放棄をすると,基本的に債権者はその(元)相続人に対して請求をすることができなくなります。

 

つまり,一般論としては,債権者にとって相続放棄とはとても都合の悪い制度ともいえます。

 

3 実際には

これはあくまでも個人的な経験ですが,債権者にとって相続放棄が必ずしも悪いものではないようです。

 

もちろん,債権が回収できなくなるので,損失が生じてしまうという点は揺るぎません。

 

もっとも,通常,債権者は回収不能のリスクを初めから織り込んでいます。

 

そして,支払いが滞った債権がある場合,回収作業,手続きを開始するのですが,これには人手もかかりますし,支払い交渉などタフなコミュニケーションを長期間行わなければならない可能性もあります。

 

相続人に対して回収をしようとするならば,そもそも相続人調査を行わなければならず,骨が折れます。

 

これだけの労力を割いてもなお,必ず支払われるという保証もないので,金額が少額である場合や,あまりにも遠い相続人に請求しなければならない場合など,場合によっては早く貸し倒れ処理をし,案件をクローズしまいたいケースもあるようなのです。

 

そこで,小職は,相続放棄を受任した際,債権者が判明している場合には,相続放棄手続き完了後に債権者へ連絡を取り,相続放棄申述受理通知書の写しを送付するなどの対応を行っております。