我が国において3月から4月は,年度が変わる時期でもあり,とてもあわただしい場面もあります。
法律関係の手続きなどでもお忙しい方がたくさんいらっしゃるかと思います。
弁護士法人心東京駅法律事務所で相続案件を中心に取り扱っている,鳥光でございます。
さて,今回で相続放棄シリーズも4回目となります。
以外と知られていない,そして多種多様なパターンがある,相続放棄に関する質問状(照会書兼回答書)について,お話をします。
1 質問状(照会書兼回答書)について
相続放棄の手続きと聞くと,相続放棄申述書とその付属書類を裁判所に提出することを想像する方が多いと思います。
もちろん,これも相続放棄の手続きに必要な行為ですが,一部に過ぎません。
相続放棄は,相続放棄申述書を裁判所に提出しただけでは終わりません。
裁判所は,相続放棄申述書を受取ると,書類の内容を審査します。
そして,審査がある程度の段階まで進むと,基本的に裁判所は,申述人に対し,書面で質問をします。
照会書兼回答書という名称で送付されてくることが多いです(裁判所によって運用が異なる)。
質問の目的は,申述人が本当にその意志で相続放棄の手続きを行っているか(なりすましや強要でないか),法定単純承認事由に該当する行為を行っていないか,を確認することにあると考えられます。
答え方によっては,相続放棄が認められなくなる可能性もあるので,回答は慎重に検討する必要があります。
2 質問状(照会書兼回答書)の送付先のパターン
質問状の送付は,裁判所によって運用が区々ですが,次の3つのパターンが多いです。
①申述人本人に対し,申述人の住所へ送付する(申述人が裁判所へ回答を返送する)
②代理人弁護士がいる場合,代理人弁護士の事務所宛に送付する(代理人が回答を返送する)
③代理人弁護士がいる場合に限り,そもそも質問状を送らない
仮に小職が相続放棄のご依頼をいただいた場合,①のパターンであれば,質問状のコピー等をいただき,内容を検討したうえで,回答を作成しアドバイスさせていただきます。
②のパターンであれば,小職が回答を作成し,裁判所へ返送します。
③のパターンであった場合は,質問状への回答によって相続放棄が認められなくなるリスクをゼロにできます。
手前味噌ですが,これは弁護士が代理人に就くことの大きな価値の一つです。
3 質問の内容
質問状(照会書兼回答書)に記載されている質問についても,裁判所によって区々です。
1,2問程度の簡単な質問しかしない裁判所もあれば,10問以上の質問をし,しかもやや専門的な内容が混じるような裁判所もあります。
どの裁判所がどのような運用をしているかは,申述を行ってみるまでわかりません。
経験上,申述人本人に質問状を送付する裁判所は,質問が多く,かつ高度なものである傾向があると考えられます。
代理人に質問状が来る場合,簡素なものであることが多いです(代理人により,事前に申述人に対するチェックが働いているという前提なのだと思います)。
申述人ご本人様に質問状が送付された場合,焦らず,専門家に内容を伝えて,回答を検討すれば安心です。