春は暮らしやすいものの,天候が不安定な日もあり,外出や出張の際の持ち物に悩みます。
急な天候変化にはお気を付けください。
東京駅前にある弁護士法人で相続案件を扱っている鳥光と申します。
相続放棄シリーズ3回目となります。
今回は,被相続人に関する金銭請求についてお話します。
1 被相続人に関する金銭
被相続人がお亡くなりになった際,受取ることができるお金が発生することがあります。
典型的なものとしては,生命保険金,未支給年金,退職金などが挙げられます。
そして,相続放棄を検討されている方にとって,これが最も悩ましいものとなります。
2 被相続人に関する金銭を受取るべきか否か
相続放棄を検討する際,法定単純承認事由に該当する行為を行ってはいけません。
法定単純承認事由に該当する行為の一つとして,債権の取り立てがあります。
ここでいう債権とは,被相続人の債権であり,取り立てとは,お金を請求できる権利を行使してお金を受取ることです。
つまり,被相続人が亡くなられたことに伴って受取ることができるお金が,被相続人の債権に基づくものであった場合,受け取ってしまうと法定単純承認事由に該当する可能性があるのです。
そして,とても悩ましいことに,被相続人が亡くなった際に受取ることができるお金には,被相続人の債権に基づくものと,相続人固有の権利に基づくものがあります。
前者に該当する債権に基づくお金を受取ることはできませんが,後者に属する債権に基づくものであれば,そもそも相続財産ではないので受け取っても法定単純承認事由にはなりません。
被相続人が生前貸し付けていたお金の返済のために支払われる金銭などは前者に該当しますので,受取るべきではありません。
被相続人が契約者・被保険者で相続人が受取人となっている生命保険金,相続人を受取人として定めている死亡退職金・未支給年金,葬儀を主宰する者に支給する旨が条例等で定められている葬儀費用補助金などは,相続人等固有の権利ですので受取ることができます。
3 実務上の問題
受け取っても法定単純承認事由に該当しないお金について述べましたが,実務の現場ではもっと大きな問題があります。
それは,受取ろうとしている金銭が,本当に受取っても法定単純承認事由に該当しないものであるかを確定させることです。
抽象的に受け取ってよいお金とそうでないお金を述べることはできます。
しかし,本当に受け取ってよいかを厳密に判断するには,個別具体的に書類等を精査し,場合によっては会社や市町村の窓口まで行き,相続人固有の権利に基づく支払いである旨の確認まで取らなければなりません。
これはマンパワーの側面においても,容易なことではありません。
そのため,相続放棄検討段階では請求はせず,相続放棄を終えたあと,または並行して時間をかけて受け取れる金銭であるかを検討する方が良いです。
通常,相続放棄申述期限のうちに受け取らなければならないという金銭はないため,受け取れることが確定出来たら,ゆっくりと受取ればよいのです。