予防法務と相続放棄 その1

東京は台風も通り過ぎ,秋らしい気候になってきました。

 

一日の中での気温の変化が大きいので,体調管理には気を付けたいところです。

 

数年前から,「予防〇〇」という言葉をよく耳にします。

 

なじみのあるものとして,予防医学というものがあります。

 

これは,病気になってから治療をするのではなく,予め病気にならないように備える行動をするというものです。

 

法律全般についても予防法務という言葉があります。

 

紛争が起こってから法的に解決するのではなく,予め法的な紛争が起こらないようにするというものです。

 

そして相続についても同じことが当てはまると感じます。

 

相続の場面でいえば,「生前対策」と言い換えることもできます。

 

生前対策と一言で申しても,かなり幅が広いです。

 

遺産分割の争いを予防するために遺言を作成する,相続税の支払い資金を用意するため生命保険に入る,など様々なものが考えられます。

 

今回は,次回との2回に渡り,相続放棄についての生前対策を考えてみます。

 

相続放棄と生前対策は,一見結びつかない感じがします。

 

しかし,相続放棄には,事前に抑えておかなければならない点がたくさんあります。

 

その理由は,相続放棄には以下の2つの特徴があるからです。

 

1 申述期限が相続開始を知った日から3か月以内と,非常に短いこと

 

2 相続放棄が認められなくなる行為をしてはならないこと

 

まず,1につきまして。

 

相続放棄は,裁判所に提出する申述書を作成しなければならないことに加え,戸籍謄本類などを公的機関から取り寄せなければなりません。

 

ご兄弟の相続放棄などは,取り寄せる資料が多く,非常に時間と手間がかかります。

 

申述期限が非常に短いため,被相続人が亡くなった(相続が開始した)ことを知ってから相続放棄のことについて調べたり,検討を始めたりすると,相当タイトなスケジュールで資料入手やその後の手続きを行わなければなりません。

 

平日日中にお仕事をされている方であれば,かなりの無理を強いられる可能性もあります。

 

そのため,例えば多額の借金を抱えている親御さんが亡くなりそうで,相続放棄をする可能性があるのであれば,予め必要な書類や手続きを確認しておき,お亡くなりになられたらすぐに相続放棄のための行動を開始できるようにしておく必要があります。

 

次回は,2について説明いたします。