暑い日が続いております。
東京は気温が高いだけでなく,アスファルトやコンクリートが熱を吸い,夜に放出する関係で,夜になっても気温が高いままです。
熱中症には十分にお気を付けください。
さて,遺産分割協議を行うにあたり,相続人間で具体的な分割の話をする前に行わなければならないことは,相続財産の確定です。
相続財産には「何」があり,それは「いくら」なのか,を確定させます。
今回は「いくら」の部分についてお話をさせていただきます。
預貯金や不動産,株式など,被相続人の財産がわかりましたら,これがいくらになるのか,評価額を調べる必要があります。
理由は,相続人間での遺産分割の公平性を確保するためです。
例えば,相続人が兄弟2人だけで,法定相続割合に従って2分の1ずつ相続財産を分けるとします。
その際,相続財産すべてを金銭に評価し,総額を明らかにしないと,それぞれの相続人が本当に法定相続割合に基づいて相続財産を取得できているかを客観的に判断することができません。
仮に兄が現金と預貯金,弟が土地と株式を取得するとした場合,土地と株式の金銭評価額が明らかになっており,兄が取得する現金預貯金と同額であれば,お互いに納得することができます。
具体的な評価について,預貯金は被相続人死亡時の残高がそのまま評価額になるので問題ありません。
株式,投資信託についても,被相続人死亡日の価格が評価額になります。
証券会社に依頼することで,当時の価格を記載した書面を発行してもらえます。
問題は不動産です。
不動産の評価額を表すものは,いくつもあります。
固定資産評価額,路線価,公示価格,不動産鑑定士による鑑定額,不動産業者による査定額などです。
遺産分割においては,どの評価額を使うかは決まっておりません。
極端なことをいえば,相続人間で合意が取れれば,いくらでも構わないのです(遺産分割における評価額と,相続税評価額は別物です)。
しかしながら,不動産の代償分割においては,評価額は争いのポイントとなり得ます。
不動産の代償分割とは,相続人の一部が不動産を取得する代わりに,他の相続人に対して金銭の支払い等を行う分割方式です。
例えば,相続人が子3人,相続財産が評価額3000万円の土地のみである場合を考えます。
法定相続割合に従えば,相続人一人あたりの相続分は金額に換算して1000万円ずつとなります。
このとき,相続人の1人が土地全部を取得し,その相続人が他の2人の相続人にそれぞれ1000万円ずつ支払う(これを代償金と呼ぶことがあります)ことで,全員が1000万円ずつ取得したことと同じになります。
これが代償分割です。
このケースにおいては,土地全部を取得する相続人としては,評価額をできるだけ下げたいという気持ちが働くのが人情です。
仮に評価額が2400万円であれば,他の相続人に対して800万円ずつしか支払わなくて済むからです。
逆に,代償金を受け取る相続人は,当然評価額を高くしたいと考えます。
この折り合いがつかず,調停になることさえあります。
経験上,一般的に相続人間で納得しやすい評価額は,都心部であれば市場価格に近い価格,地方の小規模な市町村で買い手が募りにくい場合は相続税評価額や固定資産評価額です。
市場価格に近い価格とは,複数の不動産業者へ査定をお願いして出していただいた価格の平均値などです。
簡易的には,固定資産評価額を0.7で除するということでも市場価格に近い価格を算出できます。
調停になった場合,折り合いがつかないときには不動産鑑定士に鑑定を依頼することもありますが,費用が高額になるので,できるだけ避けたいところではあります。
遺産分割は勝ち負けではなく,互譲による調整で進めていくものです。
遺産の評価額においては,お互いが何とか認めることのできる中間的価格を,合理的な裏付けを以て示していくということが大切です。
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