区分所有建物と財産管理2

今回もブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、共同住宅の空き家を管理する手段についてです。

 

共同住宅という言葉の意味は広いため、ここからは区分所有建物という言葉を用います。

 

区分所有建物とは、区分所有法第1条によれば「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるとき」の「各部分」のことです。

 

一般的なイメージとしては、分譲マンションにおけるマンションの1室です。

 

財産管理の観点から、空き家となっている区分所有建物を、次の3つに分けてみます。

 

①相続人不存在となっている区分所有建物
②所有者不明となっている区分所有建物
③管理不全となっている区分所有建物

 

①は、持ち主が亡くなり、相続人の存在が判明しないものです。
法的に所有者がいない状態となります。
元々相続人がいなかったという場合と、相続人がいたものの全ての相続人が相続放棄をした場合があります。
この状態になっている空き家は、相続財産清算人による管理、処分をすることになります。
管理、処分の対象は、空き家以外のすべての相続財産に及びます。

 

②は、法的には所有者がいるものの、行方がわからずまったく連絡をとることもできないものです。
これについては、現在の法律上は不在者財産管理人による管理、処分での対応が見込まれます。
ただし、相続財産清算人の場合と同様に、不在者のすべての財産を対象とする必要があります。

 

③は、所有者がいるにもかかわらず、適切な管理が行われていないものです。
ゴミ屋敷状態になっているものや、放置されて荒れ放題になってしまっているものなど、他の住民等に被害が及ぶ(またはその可能性がある)空き家が挙げられます。
このような空き家への対応は、現行法上は所有権に基づく妨害排除・予防請求権の行使や、共同利益は違反行為に対する措置が考えられます。
しかし、いずれも、管理不全となっている空き家を直接管理することはできません。

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区分所有建物と財産管理1

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

今回からは、区分所有建物と財産管理についてのお話を書いていきます。

 

昨年から今年にかけて、相続人不存在となったマンション(区分所有建物)の管理・清算をしました。
先日、相続財産清算人としての手続きをすべて終え、財産を国庫に納めたところです。

 

相続財産清算人(旧:相続財産清算人)として区分所有建物を扱ったのは、初めてでした。

 

これまでに行った相続財産清算人の業務は、自治体が居住用の土地の有効活用を目的とした空き家対策や、隣接地に生じた危険を排除するために申し立てられたものでした。
そのため、管理、清算の対象はベッドタウンの一軒家でした。

 

しかし、実際には、マンションなどの共同住宅の方が空き家が多いのです。
総務省の発表によれば、2023年10月時点において、全国に899万5200戸ある空き家のうち、マンションやアパートが502万3500戸を占めています。

 

参考リンク:e-Stat(政府統計の総合窓口)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004015763

 

特に、都市部の方が、共同住宅の空き家の割合が高い傾向にあるように見受けられます。
東京都においては、空き家の総数は96万7800戸であるところ、そのうち共同住宅の空き家は84万700戸となっています。

 

もちろん、共同住宅の空き家すべてが所有者不存在、所有者不明、管理不全に陥っているわけではありません。
それでも、居住者の高齢化が進むにつれ、このような状態になってしまう共同住宅も増えていってしまうと考えられます。

 

次の記事では、現時点での空き家管理手段についてお話しします。

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情報セキュリティの話22

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、情報セキュリティに関するお話の最終回となります。

 

これまで21回に渡り、情報漏洩が法的な問題となった事例、システム面・人的な面における情報セキュリティ維持、企業・組織に属している人のセキュリティリテラシー向上等について説明をしてきました。

 

情報セキュリティの維持・向上は、基本的には、それ自体が直接利益を生むものではないので、意識の面においても投資の面においても、優先度が下がりがちになります。

 

情報セキュリティは安全の一種でもありますので、タダでは手に入らないというのが現実であると考えられます。

 

実際に重大なセキュリティインシデントが発生してきたこともあり、行政としても、情報セキュリティを担う人材育成を推進する動きがあります。

 

参考リンク:独立行政法人情報処理推進機構(PDFファイル)
https://www.ipa.go.jp/archive/files/000039528.pdf

 

また、海外においては、専任のセキュリティ責任者を設置している企業や、情報セキュリティを専門とする企業にセキュリティ診断やセキュリティ業務の標準化を委託している企業もあるとされています。

 

これまでの記事を通じて、情報セキュリティに関する認識をより高めるとともに、情報セキュリティスキル・人材の価値向上に貢献できれば幸いです。

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情報セキュリティの話21

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

今回は、情報セキュリティに関するお話しの21回目です。

 

企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシーの強化の方法のうち、「採用時の確認」について説明します。

 

応募者の方が、入社前段階でどの程度のセキュリティリテラシーを有しているかを確認する方法のうち、最も典型的なものは採用段階でペーパーテストを行うというものです。

このペーパーテストは、あくまでも採用の可否を決めるものではなく、採用前時点でどの程度のセキュリティリテラシーがあるかを確認するために用います。
セキュリティリテラシーが一定水準以上であれば入社後の内部教育は少なくし、水準に満たない場合には入社後に内部教育をしっかり行うという選別をします。

 

また、募集要項に、IT系の資格や職務経験、研究経験がある場合には履歴書や応募フォームに記載してもらうよう記すのも、ひとつの手であると考えられます。
そのうえで、面接時にセキュリティについて確認をすることで、セキュリティリテラシーの程度を計ります。
ITにも様々な分野が存在していますので、IT系の資格や職務経験等があっても、必ずしもセキュリティリテラシーが高いとは限らないためです。

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情報セキュリティの話20

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、情報セキュリティに関するお話の20回目です。

 

前回に引き続き、企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシー強化の方法のうち、「内部教育」について説明します。

 

内部教育は、いわゆる座学研修が基本となります。
セキュリティに関する一定の知識を有する社内担当者が講師になるか、外部の専門業者に依頼をする、またはこれらを組み合わせる形で行います。

 

個人的には、「用語の意味」の理解に重点を置くことと、「実例」を用いることが大切であると考えております。

 

セキュリティに関する教材などに登場する言葉の中には、どうしても「マルウェア」「有線LAN」「SSL」などの、ITエンジニア用語が含まれてしまいます。

 

まずこれらの意味を知ってもらわないと、いくら研修を行っても、セキュリティ対策に関する理解が進まないということになります。

 

また、セキュリティに限らず、ITに関する理解を進めるためは、実際に操作をしてみるということが大切です。

 

有線LANの抜き方や、データをウィルス対策ソフトで検査する操作などについては、実機で行ってみると一気に理解が進むこともあります。
不正なファイルや不正なリンクが付されたメールについては、実物を使用すると危険ですので、スクリーンショットなどの画像を使用して説明するとよいと考えられます。

 

座学研修と並行して、ITに関する基礎的な資格取得を奨励するという方法もあります。
一番の目的は、IT用語に馴染んでもらうことです。
そのため、高度な資格までは不要と考えられます。
例えば、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施しているITパスポート試験の受験が挙げられます。

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情報セキュリティの話19

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

情報セキュリティに関するお話しも19回目となりました。

 

今回は、企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシーの強化の方法について、その概要を説明します。

 

企業・組織内部でのセキュリティインシデントの発生は、故意によるものを除き、過失か、そもそも情報セキュリティに関する説明を理解できていないことが原因で起きると考えられます。

 

まず、情報セキュリティに関する説明が理解できているかどうかという点に焦点を合わせる必要があります。

 

例えば、マルウェア感染時の基本的かつ重要な初動対応である、「LANケーブルを抜く」という作業ひとつとっても、そもそも「LANケーブル」が具体的にどのようなものか、PCのどこに接続されているのか、どうやって抜くのか(一般的には抜け防止のためツメがあり、ツメを押しながら出ないと抜けない)がわからないということもあります。

(自分で書いておいてというところもありますが、「マルウェア」という言葉も、どちらかというとエンジニア側の用語であり、「コンピューターウィルス」を含む言葉であると考えられています)

 

企業・組織の事業所においては、コスト等の関係で今でもデスクトップPCを使用しているところも珍しくありませんが、近年では、私生活において使用するIT機器はスマホがメインになっていて、デスクトップPCになじみがない方も増えています。

 

メールに添付されたデータや、メディアを介して受け取ったデータはウィルス対策ソフトで検査することが大切ですが、使い方がよくわからないがために面倒で省いてしまうということも起き得ます。
(なお、「メディア」という言葉もやはりエンジニア寄りの言葉であり、「USBメモリ」「CD-R」「DVD」など、具体例を挙げないと通じない可能性もあります)

 

企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシーを強化する方法としては、「内部教育」と「採用時の確認」が挙げられます。

 

次回以降、これらについて説明します。

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情報セキュリティの話18

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

情報セキュリティに関するお話の18回目です。

 

今回は、企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシーが低いと起き得ることについて、具体的に説明します。

 

まず、典型的なセキュリティインシデントではありますが、メールに添付された不正なファイル(マルウェア)を開いてしまうことや、メールに記載された不正なリンク先にアクセスしてしまうというものです。
古典的なものではありますが、今でも時折発生していることからすると、理論上の対策は簡単ではあるものの、現実に完全な対応をすることはとても難しいセキュリティインシデントのひとつであると考えられます。

 

次に、仮にマルウェアに感染した場合の対応に遅れが生じる可能性があります。

 
マルウェア感染が疑われたら、すぐに有線LANを物理的に遮断したり、しかるべき連絡先等に報告をすることができなかったり、そもそもマルウェアに感染していることに気付くことができないということもあります。
その結果、マルウェア感染の範囲が拡大してしまったり、より多くのファイルサーバ等のデータが破壊または暗号化されてしまうという事態が生じてしまいます。

 

そのほか、かつてメーリングリストの設定を誤ったことで、センシティブな情報が公開されてしまい、深刻なセキュリティインシデントが発生したということもあります。

 
近年ではリモートワークの普及もあり、複数の人がクラウドシステム上に保存されたデータにアクセスして業務を進めることも増えました。
このとき、クラウドシステム上に保存されたデータの共有設定を誤ると、本来データへアクセスさせることを想定していない人にデータが渡ってしまう可能性もあるので注意が必要です。

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情報セキュリティの話17

いつも本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は、情報セキュリティに関するお話しの17回目となります。

 

前回までは、企業の情報管理を外部の事業者に依頼する場合に提示すべき要件について説明しました。

 

そして、今回からは企業や組織の内部にフォーカスし、企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシーの強化について説明していきます。

 

企業・組織に属している人々の情報セキュリティリテラシーの強化は、カテゴリーでいえば人的側面における情報セキュリティ対策となります。

 

情報セキュリティに関するリテラシーが低いと、情報漏洩を含むセキュリティインシデントが発生する可能性が高まりますし、セキュリティインシデント発生後の対応が遅れ被害が広がってしまう可能性があります。

 

企業・組織内部でのセキュリティインシデントの発生は、故意によるものを除けば、過失によるものか、そもそも情報セキュリティに関する説明を理解できていないことが原因で起きると考えられます。

 

次回以降、情報セキュリティに関するリテラシーが低いと起き得ることや、企業・組織内部の情報セキュリティリテラシーの強化について説明していきます。

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情報セキュリティの話16

今回も本ブログをご覧いただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回は情報セキュリティに関するお話の16回目となります。

 

前回に引き続き、顧客情報など機密性の高い情報を外部の事業者等の管理下に保管する場合に、相手となる事業者等に提示すべきセキュリティ要件のうち、人的な側面に関するものについて説明します。

 

2つめの人的要件は、機密情報に携わる従業員等のセキュリティリテラシーです。

 

一般的には、システムの開発や保守運用に関わる従業員は、ある程度のセキュリティリテラシーを有していると考えられます。
しかし、ネットワーク技術者なのか、アプリケーションエンジニアなのかといった、取り扱い分野によってセキュリティリテラシーの程度は変わることはあります(セキュリティリテラシーが高い分野とそうでない分野がある)し、入社して間もない方と長年業務にあたっている方とでもセキュリティリテラシーのレベルは違うと考えられます。

 

IT技術者でない従業員も機密情報を扱う可能性がある場合には、よりセキュリティリテラシーレベルを一定以上のものに保つことが重要となります。

 

そこで、機密情報に携わるすべての従業員等に対するセキュリティ教育を施し、全員が一定程度以上のセキュリティリテラシーを有するようにしていることを要件とすることが考えられます。

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情報セキュリティの話15

今回も本ブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

情報セキュリティに関するお話しの15回目です。

 

今回からは、顧客情報など機密性の高い情報を外部の事業者等の管理下に置く場合に提示すべき要件のうち、人的側面に関するものについて説明していきます。

 

まずは、入退館管理についてです。

 

ベネッセの情報漏洩事件においては、業務の委託を受けていた人物が業務PCに私物のスマートフォンを接続し、機密情報を抜き出しました。

 

そして、裁判所は、私物スマートフォンの持ち込みを制限していなかったことにつき、注意義務違反があるとしました。

 

大きなデータセンターなどにおいては、入退館の際の身元確認だけでなく、改札機を使用して物理的な入退館を制限し、かつ警備員等が目視している状態でカバンや持ち物をロッカーに預けないとサーバールームに入れないという運用を設けていることもあります。

 

サーバールームではなく、通常のオフィスからコンソールアプリケーションを使用してリモートアクセスをするケースにおいても、裁判例を踏まえると、機密情報を扱う業務にあたる従業員に対しては、執務室に持ち込める物品の制限を設ける必要もあります。

 

これらのことを踏まえると、入退出管理についての要件として、入退館時の身元確認、持ち込める荷物の制限を設けていることを提示することが考えられます。

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