区分所有建物と財産管理12

今回も本ブログにアクセスしていただき、ありがとうございます。

 

弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

先日、区分所有建物の自主管理に長年携わり、現場が抱える問題を詳しく知る方とお話をする機会がありました。

 

区分所有建物は、人口の急増に対応するために作られはじめ、現在2つの老い(建物の老朽化と、住民の高齢化)を迎えていること、現行の制度のもとでマンションを維持管理することは困難になりつつあることなどを聞きました。

 

このような話は、専門書や区分所有建物に関する記事などで読むことはありましたが、実際に現場で問題に直面している方から聞くのとでは、現実味が全く異なります。

 

本当に集会で決議をすることができないという事態が発生していることや、集会場で管理費の金額を巡って住民同士の激しい争いに発展する場合があること、マンション管理に関する相談や問題解決の依頼ができる先が少ないことなど、書物からだけでは得られないことをたくさん学ばせていただきました。

 

また、現状として、区分所有法などマンション管理に関する法規に詳しい人や、マンション管理業務に詳しい人はある程度いるが、相続人不存在などによって管理不全に陥っている区分所有建物への対応に詳しい専門家は、現状として比較的少ないということも知りました。

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区分所有建物と財産管理11

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

今回は、NHKのクローズアップ現代で名付けられた「遺品部屋」についてです。

 

遺品部屋とは、居住者がお亡くなりになり、相続人がいない(相続人全員が相続放棄をした場合含む)ために、残置物がそのままになっている集合住宅のこととされています。

 

区分所有建物がこのような状態になってしまうと、管理費・修繕積立金の回収ができなくなります。
その結果、他の区分所有者に支払いを求める管理費・修繕積立金を値上げせざるを得なくなるということもあります。
遺品部屋が増えると、マンションの維持管理自体が困難になっていきます。

 

現状、遺品部屋の問題を根本的に解決する方法は、相続財産清算人の選任申立てとなります。
相続財産清算人が、被相続人の財産から管理費・修繕積立金等を支払い、遺品部屋となった区分所有建物を売却して流通に戻します。
場合によっては、区分所有建物の売却金から、管理費・修繕積立金を支払うこともあります。

 

もっとも、相続財産清算人選任申立てにおける管理組合の金銭的、労力的負担は相当大きいです。

 

まず前提として、相続人の調査を行い、連絡を取る必要があります。
多数の戸籍謄本を集め、相続人に書面を送付しなければなりません。
弁護士を探し、この作業を依頼をするだけでも、相当の労力と費用を要します。

 

相続人が相続放棄をしている場合には、相続放棄申述受理通知書の写しの提供を求めたり、家庭裁判所に相続放棄申述受理状況の照会をするなどの作業も必要となります。

 

そのうえで、家庭裁判所に相続財産清算人選任申立てを行います。
相続財産清算人選任申立てには、弁護士費用だけでなく、一般的には100万円程度の予納金を裁判所に納める必要があります。

 

相続財産がある程度ある場合には、相続財産の清算業務が完了した後に、予納金が返金されますが、申立てから返金までには1年以上要することが多いです。

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区分所有建物と財産管理10

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今回は、相続人不存在のために空き家となった区分所有建物の、残置物の管理についてです。

 

区分所有建物に住んでいた被相続人の残置物が、バルコニーや廊下にもある場合には、早急に処分をするか、建物内部に収容する必要があります。

 

戸建て住宅と異なり、区分所有建物の場合、バルコニーや廊下は共用部分であるためです。

 

廊下が共用部分であるということは感覚的にも理解しやすいと思いますが、バルコニーも共用部分であるという点も理解しておく必要があります。

 

バルコニーは、区分所有建物の所有者や居住者しか使えないという権利(専用使用権)が設定されていますが、一方で他の住人の避難経路にもなっています。
隣との境が、薄く強度の低い壁で仕切られてるのはそのためです。
そのため、通常は避難の妨げになる物を置くことが禁止されています。

 

廊下やバルコニーに残置物が存在している場合の対処法としても、相続財産清算人選任申立ては有効であると考えられます。

 

なお、私が管理した区分所有建物は、たまたま申立人の方が被相続人の成年後見人であったため、被相続人が施設に入るタイミングで生前に残置物は処分されていました。

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区分所有建物と財産管理9

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今回は、相続財産清算人選任の申立てを行うことができる方についてです。

 

民法952条第1項によれば、「利害関係人又は検察官の請求によって」相続財産清算人は選任されます。

 

また、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第42条第1項により、「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」も「所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは」相続財産清算人の選任申立てができます。

 

民法952条第1項の「利害関係人」には、事務管理者、成年後見人であった者、相続債権者、特別縁故者であると主張する者などが挙げられます。

 

区分所有建物が相続人不存在となり、滞納されていた管理費・修繕積立金の回収が必要な場合には、管理組合は利害関係人となるため、相続財産清算人選任申立てができます。

 

現在、マンションには2つの老い、すなわちマンションの築年数が大きくなり、かつ居住者(組合員)が高齢化が進んでいます。

 

居住者の高齢化により、相続が発生する可能性が高まります。
もし区分所有建物が相続人不存在となってしまうと、相続財産清算人が選任されるまで管理をすることができなくなってしまいます。

 

すでに都市部においては、空き家となっている区分所有建物が多くなっています。
そのすべてが相続人不存在というわけではありませんが、一部は相続人不存在になっていると考えられます。
ちなみに私が管理した区分所有建物は、もともと推定相続人がいない方がお亡くなりなったことにより相続人不存在となりました。

 

今後、管理組合による相続財産清算人選任申立てがしやすいような政策も必要になるかもしれません。

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区分所有建物と財産管理8

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今回は、相続財産清算人が管理する財産のなかに、区分所有建物がある場合に確認するべき書類についてです。

 

まず、管理規約と使用細則です。
前回も少し触れましたが、専有部分と共有部分、駐車場・駐輪場の使用方法(特に使用する際の連絡先)、届出が必要な事項などについて確認します。

 

管理規約、使用細則について、申立人から引継ぎを受けられなかったり、被相続人の自宅内で発見できなかった場合には、管理組合に連絡をして閲覧をします。

 

被相続人が敷地内に駐車場や駐輪場を借りている場合があります。
その調査のためには、管理組合に連絡して確認をします。
もし借りている場合には、賃料の支払いをできるだけ早く止めるため、自動車や自転車を売却等したうえで、賃貸借契約を解約します。

 

自動車や自転車の売却や廃棄の際には、裁判所による権限外行為許可審判が必要となることにも注意が必要です。

 

相続財産清算人の業務においては、最終的には区分所有建物を売却することになります。
その際には、管理組合に組合員資格喪失届や、区分所有者の変更届を提出する必要があります。
管理規約、使用細則を確認する際、これらの届出についてのフォーマット等があれば確保しておくと売買をスムーズに進められます。

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区分所有建物と財産管理7

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今回は、相続人不存在となった区分所有建物の管理費・修繕積立金についてです。

 

管理費・修繕積立金は、区分所有建物ではない一戸建て住宅の管理にはない要素です。

 

相続財産の管理業務の一環として、清算(売却)までの間は、管理費・修繕積立金もしっかりと支払っていく必要があります。

 

私が管理した区分所有建物においては、相続開始前に未払いの管理費・修繕積立金はなく、相続財産清算人に選任されるまでは被相続人の口座から引き落とされていました。
そのため、問題なく選任後も引き続き支払いをしていくことができました。

 

未払いの管理費・修繕積立金がある場合、整理が必要です。
相続開始前に未払いが発生していた場合、相続債務となります。
一方、相続開始後に未払いがある場合、相続財産の管理費用となります。
後者は、管理組合に連絡し、原資がある場合には可能な限り早く支払うことになります。
前者の支払いは、相続債権者に対する弁済となりますので、厳密には相続債権者・受遺者への請求申出の公告期間完了後に支払うことになると考えられます。

 

預貯金などがあまりなく、管理費・修繕積立金を支払うための原資がない場合には、裁判所および管理組合と協議のうえ、早急に区分所有建物を売却して、その売却金から支払うとともに以降の管理費・修繕積立金の発生を止めることを検討します。

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区分所有建物と財産管理6

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今回は、区分所有建物の現地調査の第一歩となる、玄関の開錠についてです。

 

相続財産清算人選任の申立人から、被相続人の自宅の鍵の引継ぎがなかった場合には、鍵の専門業者の方に依頼して玄関を開錠する必要があります。

 

私がかつて管理した被相続人の自宅は、いずれも玄関の鍵がありませんでした。
自治体が空き家管理のために申し立てをしたものでしたので、生前の被相続人とのつながりはないため、玄関の鍵に限らず被相続人の財産に関するものはほとんど引継ぎがない状態でした。
そのため、玄関の鍵を開錠したうえで、鍵交換をしました。

 

幸い、私が管理した区分所有建物については、被相続人の成年後見人が相続財産清算人の選任申立てをしたケースでしたので、玄関の鍵を含め被相続人の財産関連の物品一式を引き継ぐことができました。

 

もっとも、仮に玄関の鍵がなく、開錠したうえで鍵交換が必要になる場合、区分所有建物特有の注意点があります。

 

区分所有建物においては、一般的に玄関扉自体は共有部分、内側の塗装部分は専有部分、錠も専有部分になります。
錠が専有部分であれば、相続財産清算人側で鍵交換が可能であると考えられますが、前もって管理規約を確認し、錠が専有部分であることを確認するべきです。

 

例えば、国土交通省のウェブサイトで公開されている単棟型の標準管理規約第7条第2項第2号においては、錠は専有部分とされています。

 

参考リンク:マンション標準管理規約(単棟型)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001746766.pdf

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区分所有建物と財産管理5

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今回は、相続財産清算人が区分所有建物の管理をする際における、管理組合の総会の扱いについてです。

 

相続財産清算人に選任された時期によっては、売却するまでの間に管理組合の総会が実施されることがあります。

 

予め管理組合(またはその委託を受けている管理会社)に相続財産清算人の連絡先を伝えておくことで、総会に関する情報を提供してもらえることもあります。

 

管理組合総会では、区分所有建物の管理運営に必要な事項の決議を行います。
これは区分所有建物ではない不動産にはない特徴です。
具体的には、共用部分の変更や規約の変更、建て替え決議などが挙げられます。

 

議決権については、相続財産に属している区分所有建物の代表権者として、相続財産清算人が行使できると考えられますが、決議の内容によっては権限の範囲外となる可能性もあります。
そのため、議決権を行使する際には、事前に裁判所に確認をする必要があります。

 

また、総会用の資料として、大規模修繕計画に関する資料や、規約の変更案などが提供されることもあります。
これらはしっかりと保管し、売却時の物件情報の補足資料としても用いることができます。

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区分所有建物と財産管理4

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弁護士・税理士の鳥光でございます。

 

今回からは、相続財産清算人が管理する財産に、区分所有建物が含まれている場合についてのお話を記していきます。

 

区分所有建物に限ったことではありませんが、まずは、不動産の現地調査を行います。

 

私が経験したケースにおいては、管理対象の区分所有建物は、家族用の規模のマンションでした。

 

マンションの入り口に管理人室があり、管理人の方がいらっしゃったので、居住者の方(管理組合の組合員)がお亡くなりなられたこと、相続人不存在であったため自分が選任されたことなどを説明しました。

 

管理人の方は、管理組合から委託を受けている管理会社の担当者でした。
こちらの身分と連絡先を伝えるとともに、管理会社の担当者の方の連絡先等もうかがっておきます。

 

今後の区分所有建物の管理や売却の手続きなどの際、管理会社に連絡をすることも多いので、できるだけ早めに関係を築いておくとよいです。

 

例えば、かなり細かいことですが、管理費や修繕積立金の支払方法の調整が挙げられます。
私が管理したマンションにおいては、管理費や修繕積立金は被相続人の口座から引き落とされていました。

 
財産管理のため、被相続人の口座は解約し、預金は管理口座に移しますので、管理費と修繕積立金の支払方法も変える必要がありました。
管理会社と相談をしたところ、本来は引き落としのみとのことでしたが、銀行が指定されているとのことでしたので、請求書方式に代えてもらうことができました。

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区分所有建物と財産管理3

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弁護士・税理士の鳥光です。

 

前回、空き家を法律的に管理する方法について述べました。

 

所有者不明となっている区分所有建物と、管理不全となっている区分所有建物の管理については、現状として、これらの特化した財産管理制度はありません。

 

区分所有建物ではない戸建ての空き家においては、令和5年4月に施行された、所有者不明土地・建物管理制度、管理不全土地・建物管理制度による管理が可能です。

 
しかし、これらの制度は、区分所有建物には適用されません。

 

この状態を踏まえ、2024年2月15日の法制審議会における区分所有法の改正要綱が採択されたことから、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度が成立する可能性があります。

 

所有者不明となっている区分所有建物の管理については、共用部分の扱いや、建て替え決議における議決権行使などの点において、民法の所有者不明建物管理制度とは異なります。

管理不全となっている区分所有建物の管理については、さらに管理不全専有部分と、管理不全共有部分の管理制度があります。

管理不全専有部分の管理制度は、専有部分内の残置物・廃棄物、腐食した配管の管理などが想定されています。

管理不全共有持分の管理制度は、共有部分である外壁が損傷している場合や、廊下などにゴミがたくさん置かれている場合の対応を想定しています。

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